撮影機材の中では一見脇役。ですが、写真の質に関わる重要な機材や道具があります。
私の環境では、商品撮影時には水平器とケーブルレリーズは手放せません。
撮影セットを自作して、機材の購入費を抑えようというやり方もあるのですが、専用の機材を使う方が精度があがりますし、何より信頼できます。
レンズの記事でも書いたのですが、道具や機材への信頼感は常に重要な要素です。
水平器
まずは水平器。ただ単に、水平を計るだけの代物です。レベラーなどとも呼ばれ、撮影以外の場面でもよく使われます。撮影につかうものとは形が違いますが、建築現場などでは一般的に使われています。
水平器の構造は単純で、密閉された細長い空間に溶液と気泡をいれます。溶液の入った細長い空間が水平なるようにすると気泡が真ん中にきますので、それで水平か水平ではないのかを確認できます。
私の所持している水平器は右の写真のもので、堀内カラー(HCL)さんの日本製ハンドメイドの水平器なのですが…。この記事を書く際に調べてみましたら、販売終了[別窓]でした。
購入した際にヨドバシカメラの店員さんに聞いた所、ハンドメイドだからといって性能に違いはないそうです。また、堀内カラーさんの水平器の色は透明ですが、蛍光色のもは徐々に退色するらしいので色の有無は気にしないでよいかもしれません。今の所撮影で困ったこともありませんし。
水平器の種類
水平器には様々な種類がありますが、私は長方形(直方体というべきですが)のラウンド形を使っています。
他にも丸形や立方体などがありますが、電子的な水平器もあります。カメラの上部に取り付けるタイプありますし、三脚に付属しているタイプもあります。また、カメラ自体に水平器が内蔵されているものもあります。
実際に撮影に使用した経験はありませんが、恐らくカメラ内蔵型の水平器が一番便利でしょう。水平器を新たに用意する事もなく、ファインダー内で確認ができますから。三脚付属の水平器も使いやすそうですが、作りの悪い三脚だと水平器の取付け自体に問題がある可能性もあり、それなりの価格と品質でなければ信用ができません。
なお、私自身がこれらを使っていない理由は単純で、カメラに水平を見る機能はなく、三脚にもついていないからです。
水平の重要性
商品撮影において水平がもっとも重要なのは箱入の商品を撮影するときでしょう。イメージとしてはお歳暮やお中元の箱詰めセット商品を正面から撮影した写真が分かりやすいかもしれません。
正面や上方から直方体を見るアングルの写真は、左右のバランスや被写体の水平線の狂いが目視で簡単に分かってしまいます。手前の角角と奥の角と角を横方向で比較すればすみますから。
なお、横縞や波打つなど表面の模様や色によって錯覚を起こしますから、必ずしも目視が正確とはいえません。しかしいくら実際に正確な形を撮影できても見た目が歪んで見えるならば、何かしらの修正が必要な可能性があります。
水平を無視ししてブツ撮りをするのは後々の作業時間と出来上がりの質に関係してきますから、手を抜かずにきっちり水平を出した方がよいでしょう。もちろん、商品をセットする机などの水平が重要であることはいううまでもありません。
ケーブルレリーズ
商品、といいますか手ブレが許されない被写体全てに対して有効な道具がケーブルレリーズです。カメラに接続し、レリーズケーブルのボタンでシャッターが切れる単純かつ重要な機能を持っています。
カメラによっては赤外線のリモコンで操作可能なものもあります。が、赤外線の受光部がどこを向いているかは確認した方が良いです。変え米良の前面についている場合、当然カメラのレンズ側からリモコンを操作しないといけません。集合写真に自分も写るために使うなら良いのですが、それ以外では有線のケーブルの方がよい場合もあります。
なお、端子はカメラの機種毎にある程度変化がありますので、ケーブルレリーズが使えるのかを事前に調べておく必要があります。
ブレをなくす要
ケーブルレリーズはブレをなくすための要のような道具です。
写真撮影でブレが起る主な要因は以下の通り。
- カメラを支える手の震え
- シャッター押す際の震え
- 被写体の動き
基本的にはカメラか被写体のどちらかが動いた時にブレます。三脚を使う商品撮影においては、カメラを支える手の震えや被写体の動きは関係しませんから、残りはシャッターを押す際の影響のみ。
シャッタースピードが速い場合はブレの心配はなくなりますが、シャッタースピードが遅ければ遅いほど大きな問題となります。
ケーブルレリーズを使えばカメラに直接力を加える必要がなくなりますから、ブレを最小限に抑えられます。
なお、ブレをなくすという意味ではセルフタイマーも有効です。カメラに触れずにシャッターが押せれば良いので、レリーズケーブルもリモコンもない場合には有効な方法です。
補正で直すということ
水平の傾きや手ブレは、ある程度なら画像処理ソフトの補正で直せます。ですが、補正するからいいやでは写真の質は劣化の一方です。
形の補正をする場合、どこかが引き延ばされてどこかが縮められます。本来そこにあったものが変えられてしまう訳です。一見すると整っているように見えても、その内実は「整っているように歪ませた」にすぎません。
「歪ませて何が悪い」といわれればそれまでですが、できる限り生の写真の良さを活かして使える方が個性的で魅力的な素材として使えるはずです。なにせその写真は一枚しかないのですから。
CGのみで完全再現できるなら別ですが、同じ被写体を撮影しても全く同じにならないのが写真です。その写真はそれぞれに個性的であるとはいえないでしょうか?
めったやたらと画像処理ソフトで「整える」のではなくて、後で整えなければならないような問題を、撮影時に極力排除することが大切なのだと思います。一切補正なしは難しいですが、そうできるように努力することを止めてしまうと質の向上はあり得ません。
結び
小さく単機能な道具。高機能なデジタル製品に囲まれていると失念してしまいやすいですが、これら単機能な道具の精度や有効性は素晴らしいものです。単機能故に特化したその効力は手放せません。
例えば水平器の箇所でカメラ内蔵型がよいと書きましたが、商品を置くテーブルの水平は測り難いでしょう。三脚付属の水平器に至っては、よほどトリッキーな使い方をしない限り役にはたちません。
カメラの水平だけを見ていると気付かないうちに失敗を重ねる事になります。何のために水平を測るのか、ブレをなくすのかを意識すれば、準備はより完璧に近づくはずです。
商品撮影(に限らず撮影全般)は「シャッターを押すまでにどれほど環境を整えられるか」が肝だと思うので、この記事で書いたような道具も必要に応じて適宜使用したいところです。
撮影関連
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