翻訳記事と著作権についての落書き

※この記事は2014.5.30にBloggerに投稿していた内容を移動したものです

Webで情報を探せば、海外の記事を日本語に訳した翻訳記事を目にすることがあります。

これらを見るたびに気になっていることがあり、それを言葉にしてみようかと思います。溜め込むと割とストレスなるからという理由で書く、自分のための記事です。

翻訳と著作権

まず翻訳ですが、日本の著作権法では以下のように規定されています。

(翻訳権、翻案権等)
第二十七条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

つまりは、著者に無断で訳すな、ということです。

では「海外のものを日本語に訳すにはいちいち許可がいるのか?」という点においては、以下のように例外規定があり、権利者の許可なく翻訳可能な規定があります。

(翻訳、翻案等による利用)
第四十三条  次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該各号に掲げる方法により、当該著作物を当該各号に掲げる規定に従つて利用することができる。
一  第三十条第一項、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十四条第一項又は第三十五条 翻訳、編曲、変形又は翻案
二  第三十一条第一項第一号若しくは第三項後段、第三十二条、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第三十九条第一項、第四十条第二項、第四十一条又は第四十二条 翻訳
三  第三十三条の二第一項 変形又は翻案
四  第三十七条第三項 翻訳、変形又は翻案
五  第三十七条の二 翻訳又は翻案

上記に上げられている項目で翻訳に関わるのは、以下の通りです。

  • 第三十条第一項 (私的使用のための複製)
  • 第三十一条第一項第一号若しくは第三項後段 (図書館等における複製等)
  • 第三十二条 (引用)
  • 第三十三条第一項 (教科用図書等への掲載)
  • 第三十四条第一項 (学校教育番組の放送等)
  • 第三十五条 (学校その他の教育機関における複製等)
  • 第三十六条 (試験問題としての複製等)
  • 第三十七条第一項若しくは第二項、第三十七条第三項 (視覚障害者等のための複製等)
  • 第三十七条の二 (聴覚障害者等のための複製等)
  • 第三十九条第一項 (時事問題に関する論説の転載等)
  • 第四十条第二項 (政治上の演説等の利用)
  • 第四十一条 (時事の事件の報道のための利用)
  • 第四十二条 (裁判手続等における複製)

一般的には「私的利用」と「引用」を気にするぐらいかなと思います。他は特定の場所や状況、対象などによりそうですので。

意外に思うかもしれませんが、著作権法は教育目的においてはかなり広く著作物の利用を認めています。著作物の公正な利用という認識はちゃんとあるのです。残念ながら、現在では様々な形でいろいろな著作物とその利用方法が存在していますので、学校などの場所に限定することがだいぶ前からそぐわなくなっては来ていますが。

外国の著作物は日本の著作権法の内容で保護されるのか?

実は私自身もすこしあやふやなのですが…。外国にも著作権法があり、翻訳に際して「翻訳される側の国の著作権法」が適用されるのか、「翻訳する側の国の著作権法」が適用されるのかという疑問があります。

この件に関し、以下のようが内容があることはあります。

「内国民待遇の原則」というものがあり、保護期間を除いてはそれぞれの「翻訳する側の国の著作権法」と同等の保護をするということになっています。また、ベルヌ条約や万国著作権条約に加盟していない国の場合、いくつか例外はありますが著作権保護の義務はありません。

上記を踏まえると、やはり「翻訳する側の国の著作権法」の規定内容、つまり日本では日本の著作権法の規定で判断することになるはずです。(このあたり、調べた範囲では明確にわからないというか、「内国民待遇の原則」が書かれている程度でした)

ちなみに、外国の著作権法を日本語に訳しているページが「公益社団法人著作権情報センター」の下記のページにあります。感謝です。

翻訳記事

さて、それでは本題に。
翻訳記事は前述の著作権法のどこを根拠にしているのか?

著作者と契約している場合はもちろん上記を気にする必要はありませんが、特に契約もしてない許可も取っていない場合は「引用」が限界ではないでしょうか?

ブログに書いて公開して「私的利用だ!」というのは法律の趣旨にそぐわないと思います。ブログなどのインターネットを利用する媒体の場合、公衆送信権や送信可能化権などもからんでくるでしょうし、いろいろと判断が必要かと。

送信可能化権などに関して

以前は結構ガチガチだったはずですが、法改正により送信可能化権や複製権や公衆送信権などのWebでの利用に密接に関連した部分の例外規定が増えています。
以下は前述の「公益社団法人著作権情報センター」の「著作物が自由に使える場合は?」というページからの引用です。

Q. インターネットによる情報検索サービスを行う上で、さまざまな著作物の複製が行われていますが問題はありませんか?
A.かつては、インターネット情報検索サービス事業者による、公開された情報の収集や整理、表示用データの蓄積、情報の提供などの行為が、複製権や公衆送信権の侵害ではないかとの指摘がありました。しかしこのことが将来におけるインターネット情報社会の萎縮要因にもなりかねないとの懸念から、平成21年の法改正により、当該サービスを提供する目的のために必要と認められる限度において、権利者の許諾を得ることなくこれらの行為が自由にできるようになりました。
なお、複製等ができるのは、「送信可能化された著作物」であり、収集を禁止する旨の措置を講じた情報は収集しないこと、及び、送信可能化することで著作権を侵害することが判明した場合は、速やかにその提供を停止すること、等が条件になっています。

上記の引用もとページからもリンクが張られていますが、念のためこちらにも該当の第四十七条の六を引用します。

(送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等)
第四十七条の六 公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。以下この条において同じ。)を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物(当該著作物に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の入力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあつては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限る。)について、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物(当該著作物に係る当該二次的著作物の複製物を含む。以下この条において「検索結果提供用記録」という。)のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであること(国外で行われた送信可能化にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知つたときは、その後は、当該検索結果提供用記録を用いた自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つてはならない。

根拠の表示

法律の専門家ではないので判断などできないのですが、翻訳記事を見るたびに「許可をとってるのかな?」と多少気になります。
自由に翻訳してもよいというシステムもあるでしょうから、その場合は問題ないでしょう。

が。

どちらにせよ、多くの翻訳記事には「許諾済み」や「自由翻訳可能(うまい言葉が見つかりませんでした…)」のような注記がないのはなぜでしょう?
サイト自体の説明ページに書いている場合もあるでしょうが、記事単位で情報が拡散する昨今、記事ごとに必要な情報をまとめて表示していた方がよいのではとも思います。

記事ごとに注記がない所は「引用元に行けばわかるだろう」「引用元を見るだけで気付け」というスタンスであり、「見る側(ユーザー)が調べて確認しろ」という姿勢なのだ、と個人的には認識しています。

結び

ここまで読んでいただいて「気にし過ぎだろうと」と思われる方もいるでしょう。私自身そう思います(気にしてる方も結構面倒なんですよね…)。
ですが、例えば

「海外の記事を勝手に日本語訳し高品質の内容でアクセスアップ!私的利用や引用の範囲を無視してOKの、手軽で儲かるブログ術!」

みたいな書き方だとどうでしょう?これを見て「やって大丈夫か?」と思う人は少しは増えるのでは。

おそらく、そんな感じの認識なのだと思います。

つらつらと書いてきていますが、翻訳記事を載せているところが悪意をもってやっているとは考えていません。それに、そのサイトさんの姿勢なので外野がどうこう言うべきではないとも思っています。

ただ、記載があればすんなり読めるのになと思う次第です。

著作物の利用に関するシンプルな原則

いろいろ書いていますが、最もシンプルなのは著作権者に連絡を取り、利用の許可を得ることです。しっかりとした契約書をかわすのか、単に「OK」といわれるのかわかりませんが、ともかく許可をとることです。

国外でも国内でも、引用でも転載でも翻訳でも、権利者から許可を得て、その旨をしっかりとページ内に明示していれば問題は起こりません。

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