以前、NAVERまとめのユーザーにアイコンを盗られて配られた[リンク先がBloggerのため別窓]わけですが。最近また別のブログさんで自作アイコンが使われている事を発見し、対処しまして。その際に「そういえばどうだったかな」と思いついて調べた事柄や思った事柄を少々。
なお、ここの記事では画像などを念頭に置いています。後半に「素材配布」などに絡んだ話もありますので、対象がテキストの引用だと少々文脈がおかしくなります。予めご了承くださいませ。
[追記:2019.7.8]
記事末尾にShutterstockによる権利侵害例を追記。
NVERまとめのコンテンツの扱い
まずは、NAVERまとめの核となるコンテンツについて。NAVERのサービス利用規約から引用します。
第4条(コンテンツの取扱い)
1 本規約において、「コンテンツ」とは、文章、音楽、画像、動画、プログラム、コードその他の情報のことをいい、「本コンテンツ」とは、本サービスを通じてアクセスすることができるコンテンツのことをいい、「投稿コンテンツ」とは、利用者が本サービスに投稿、送信、アップロードするなどして当社の管理するサーバに保存させたコンテンツのことをいい、「公開投稿コンテンツ」とは、本サービスにおいて、他の利用者一般による閲覧またはアクセスが可能な投稿コンテンツのことをいいます。
ここで重要なのは、NAVERまとめでいうところのコンテンツとは、NAVERまとめの「利用者」が投稿するなどしたコンテンツを指している点です。
続いて、同4条にあるNAVERまとめが有するコンテンツに対しての権利について。
2 利用者は、公開投稿コンテンツを含むすべての投稿コンテンツに対して有する権利を従前どおり保持し、当社がかかる権利を取得することはありません。ただし、利用者は、本サービスの利用により、当社に対し、公開投稿コンテンツを利用する権利(営利目的の有無を問わず、複製、上演、演奏、上映、公衆送信、公衆伝達、口述、展示、頒布、譲渡、貸与、翻訳、翻案、(当社が事業目的上必要とみなす範囲で)改変する権利を含みます。また、これらの権利を第三者に再許諾する権利を含みます。)を無償でかつ無期限に、地域の限定なく許諾したこととなり、当社はかかる利用権を取得します。この場合、利用者は、公開投稿コンテンツに関する著作者人格権を当社または当社の指定する第三者による上記範囲での利用に対して行使しないことにも同意したこととなります。
ここで重要なのは、前段の「利用者」が投稿したコンテンツの「営利目的の有無を問わず、複製、上演、演奏、上映、公衆送信、公衆伝達、口述、展示、頒布、譲渡、貸与、翻訳、翻案、(当社が事業目的上必要とみなす範囲で)改変する権利」をNAVERまとめが保持するということです。また、「利用者は、公開投稿コンテンツに関する著作者人格権を当社または当社の指定する第三者による上記範囲での利用に対して行使しないことにも同意したこととなります。」とかかれており、著作人格権の行使ができない(といいますか、文言どうり放棄している)状態です。
念のため、NAVERまとめの利用規約の「第3条(禁止事項)」も引用します。
(3)当社または第三者の権利(著作権、商標権、特許権等の知的財産権、名誉権、プライバシー権、その他法令上または契約上の権利を広く含みます。)を侵害する行為。
(4)当社または第三者になりすます行為または意図的に虚偽の情報を流布させる行為。
上記をまとめますと、「著作権などの第三者の権利を侵害しないコンテンツ利用者が投稿し、NAVERまとめは投稿されたコンテンツ自由に利用できる」ということになります。
NAVERまとめに投稿されたコンテンツの実態
ここでNAVERまとめのサービスの趣旨をNAVERまとめのサービス紹介ページ「誰でも[情報をデザイン]できる場所。」から引用します。
■まとめが必要な背景は?
あまりに多くの情報が溢れ、さまざまな場所に分散し、断片化が進みつづける今、既存のメディアや検索エンジンだけでは、必要な情報にたどり着けないことが多くなりました。情報をみんなが効率よく活用できる未来のために、テーマにあった良い情報を収集、選別し、共有する新しい役割=WEBキュレーターの重要性が、識者を中心に語られ始めています。
NAVERまとめは2009年7月に生まれ、WEBキュレーターに最適なプラットフォームを目指して進化を重ねています。誰でも簡単に、収集した情報をわかりやすく整理し、まとめることができる、つまり[情報をデザイン]できるようにすることで、今までにはなかった、人と情報との出会いを実現していきたいと考えています。
つまり、NAVERまとめのコンテンツはpixivさんのように自作コンテンツを投稿する場所ではなく、主体はあくまで他人のコンテンツの利用です。
NAVERまとめが利用できる権利はそもそも誰の物か?
ここで大きな疑問があるのですが、規約でしめされている「公開投稿コンテンツを利用する権利」とは誰から得た権利でしょうか?規約では利用者となっていますので、ここでいう「利用者」は他人のコンテンツをまとめた方です。
が。
NAVERまとめに投稿した人の権利ではなくて、大元の著作物を作った人に発生する権利が著作権です。NAVERまとめの利用者は該当著作物の著作権を有していないはず。
では、NAVERが利用できる利用の権利の実態とは…?
なお、NAVERまとめでは他人のコンテンツが利用者によって投稿された場合に発生する権利を「営利目的の有無を問わず、複製、上演、演奏、上映、公衆送信、公衆伝達、口述、展示、頒布、譲渡、貸与、翻訳、翻案、(当社が事業目的上必要とみなす範囲で)改変する権利」と定めています。
どうなんですかね?
制作元の消失
私は法律に明るくないので、実際には法的に全く問題ないことをやり玉に挙げているだけかもしれません。
が、こんな私でも「おいおい」と思うことはありまして。実は本題はこちらです。
具体的に申しますと、「NAVERまとめにまとめられた元情報が消失しているのにまとめに情報がのったまま」という状態が存在している点です。
サイトは消える
WEBサイトの運営は個人個人、あるいは会社毎の事情により中止されます。それぞれが運営コストの支払いを止めるという判断をすれば消え行くのみです。当然データは削除され、どこかに保存されない限りは消えていきます。
ところがNAVERまとめにまとまられると別です。制作元のサイトが消失してもまとめにはNAVERが利用できる形で保存されています。現実に、無料素材としてまとめられ配布されている素材の「出典」をクリックしてみてください。少なくない割合でリンク先が消えている状況が確認できるはずです。(または、利用者の著作権違反が分かるでしょう)
NAVERまとめのコンテンツとはなんなのか
制作元が消えたデータが、NAVERまとめのコンテンツとしてNAVERに「無償でかつ無期限」に利用される。
『元がaiで、aiデータを保存している訳じゃない』というのであれば、権利者の確認無しに勝手にjpgに変換して保存し、自由に利用している事にならないでしょうか?
『元のjpgデータより劣化しているから利用価値が無い』というのであれば、劣化させたことによる権利の無視が可能ということでしょうか?
NAVERまとめが自社の為に利用しているコンテンツとは、まとめられた情報ではなくて、まとめた際に生成されるデータではないかと思います。でなければ、出典元のデータ(著作物)を自由にできることになっていますし。
意図はどうあれ、形としては。NAVER自らは手を汚さずに、利用者の投稿によって他人の著作物の複製データを生成させ、自社が利用可能な素材を入手し、その素材を自由に利用できる、という構図であるともいえます。
無料素材配布サイトの素材は?
そもそも無料で配布している素材ならいいだろう、という考えもあるかと思います。
しかしながら、一概には言えないのですが多くは二次配布を禁止していると思います。つまり、自らの無料素材サイトでの配布をしているだけで、それを取得して自分で更に配布することは禁止なのです。
著作権放棄の素材配布サイトの場合は、どの程度の著作権を放棄しているのかが重要になります。全てを放棄しているとは限りませんから。
NAVERまとめは著作権を気にしない
一度アイコンを盗られて配られた身としては、納得できる話ではありません。
前述しましたが、NAVERまとめは基本的に他人の作成したコンテンツをまとめるのですから、サービス利用者は著作権者でありません。サービスの趣旨がそうなのですから。
禁止事項に著作権違反を許さないと書いていても、事前チェックはもちろんありませんし、権利者からの訴えが無いと著作権違反かどうかの調査もしない仕組みです。
『事前チェックなんかしてたらコストがかかってサービスが運営できない!』というなら、そもそも成り立たないサービスだということでしょう。他人のコンテンツを自由に利用し、儲けようという営利企業であるならばコストをかけなければならない部分であるはずです。
著作権切れコンテンツ
念のため最後に記載しますが、著作権切れコンテンツの利用を制限する意図はありません。
何億を稼いだ映画にしろ、ベストセラーの小説にしろ、著作権が消えれば利用が可能ですから。
著作権放棄のコンテンツの利用も同様です。
NAVERまとめには数多くのコンテンツがまとめられており、中にはNAVERまとめの規約どおりの利用に全く問題のないコンテンツも含まれているはずです。
結び
長々と書きましたが、言いたいことは書けたかなと。
反面、自分の知っていた事と調べた事で書いているので、正しい事を書いているかどうかに絶対の自信があるわけではありません。NAVERまとめが定義するコンテンツの定義とその利用方法に違和感を強く感じていることに間違いはありませんが。
もしも内容の間違いがありましたら訂正してお詫びいたしますので、ご指摘をいただけると幸いです。
Facebookのアイコンに使われる
NAVERまとめとは違いますが、著作権侵害つながりで。以前Facebookのアイコンに無断で使われたことがあり、それも記事にしています。参考にご覧下さい。
Shutterstockにおける同種の問題
現在進行形[2019.7.8]ですが、Shutterstockでも以下のような問題が発生しています。
- Shutterstockに不正販売された写真に対して行った対応と現状について(その1)
- Shutterstockに不正販売された写真に対して行った対応の返答について(その2)
- Shutterstockに不正販売された写真の補償や今後のやり取りについて(その3)
地蔵さんこんにちはー、法務担当はおりますし場合によっては内容証明や民事などにも対応しています。おっしゃっる通り、大手上場の米国企業であり、海外の著作権事情も異なり、まずは訴訟など法的対応よりも先に現状を広く認知してもらうことを優先しています。今は中国の不正利用で頭が痛いです。
— すしぱく (@susipaku) June 4, 2019
ぱくたそさんの方は上記のように色々されてますが解決に至らず。
Shutterstockは外部の寄稿者が自らの画像を登録し、それが売れると収益をえらえる仕組みもあります。
この点はNaverよりも直接的に問題になりやすい部分です。
ぱくたそさんの例が具体例ですが、無料で手に入れた第三者の著作物を自分のアカウントで登録することで、元手なしで儲けることができるわけですから。
システム的にも現実的にも登録時に審査できない場合においては、登録後の権利侵害の訴えに対する対応が重要になりますが(Naverはこの辺が権利者にとってはまだまし)、Shutterstockはこの登録後の対応ができていない模様です。
中国での事例も問題ですが、権利や契約を重視するアメリカに本社を置くShutterstockですらこの体たらくというのは呆れ果てる状態です。
権利的に疑問のある商品を扱うサービスを利用すること自体がクライアントワークでのリスクを高めることになりますし、Shutterstockの利用は控えた方がよいように思います。
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