前回から間があいていませんが、ちょと面白そうなのをみつけましたので増刊号的に。
このシリーズでは、主にNII(国立情報学研究所)で検索して見つけた論文を取捨選択しています。
できるだけ本文が読める資料をとは思っていますが、新しい論文であればある程公開はされず、古ければ古い程電子化はされていないのが実情です。
前提
主にCiNiiで検索した内容を記事にしています。
凡例
以下に凡例を記載します。
- 本文を読める文献は【本文】と記載
- 本文データ無しや会員のみ閲覧可能は【抄録】と記載
- 本文も抄録もなしは【書誌事項のみ】と記載
文献一覧
[Title]検索エンジン・サジェストを情報源とするウェブ検索者の情報要求観点の日中間対照分析
[Authors] 聶 添 , 陳 磊 , 今田 貴和 , 宇津呂 武仁 , 河田 容英
[Bibliographic] 知能と情報 27(1), 527-532, 2015
[Readable] 【本文】
まずは抄録から引用します。
本論文では,他国と自国との間の文化・関心・意見の違いを発見する過程を支援することを目的とする.そのために,ウェブ検索者の情報要求観点を直接収集し,ウェブ検索者の関心動向を迅速に把握するというアプローチをとる.
執筆者を含め、内容的に日中という2国間にまたがる調査を行ったようで、その点はあまり他では見ない内容かと思います。
タイトルにある通り、検索者がどういうワードで検索するのかという視点を用いています。
これは、例えば時事問題などであってもWeb上にある程度の量の用法が揃うまでにはタイムラグがあり、そこをなんとかできないかと考えてのことだそうです。
ある視点では「情報を受動的に受けるしかない」ともいえるユーザーが、検索という能動的な行動をとることで、情報の送り手が発信する前に動向が掴めるわけです。
実際には「顕在化する前のワード」や「まだWeb上にまとまった形では存在しない情報」を探してサイトやページを作ることは一般的ですが、情報の受け手と送り手の関係性が一定の方向でないことを改めて認識出来るという意味で、意義ある視点かもしれません。
[Title] 動向に関する問いを対象とした検索エンジンの提案
[Authors] 高間 康史 , 加藤 優 , 桑折 章吾 , 石川 博
[Bibliographic] 人工知能学会論文誌 30(1), 138-147, 2015
[Readable] 【本文】
総数10ページに及ぶ本文を読むことができます。
この論文での個人的見所は、「検索エンジンをどう作るか」という内容自体です。
非SEO専門からからすると検索エンジンが実際にはどう動いているのかなどはイメージしにくいものです。
この記事を読めばその一端が垣間見えるかと思います。
なお、「Googleの中身を解明しました」というような類いの論文ではありませんので、その点はお間違えのないように。
[Title] Facebook利用におけるプライバシー開示リスクアセスメント-若手社会人のプライバシー設定状況と意識-
[Authors] 関 良明 , 広田 すみれ , 山崎 瑞紀
[Bibliographic] 情報処理学会研究報告. SPT, セキュリティ心理学とトラスト 2015-SPT-13(14), 1-6, 2015-05-07
[Readable] 【抄録】
中身が読めない上に抄録が短すぎて引用もきびしいのですが、もうタイトルだけご覧いただければ取り上げた理由もお分かりいただけるかと思います。
しっかりと調査が行われていそうですし、特定の属性をもつ集団内の状況がわかるかもしれません。
[Title] インターネット広告受信状況の調査と新たな広告制御方法の検討
[Authors] 坂本 一仁 , 松永 昌浩
[Bibliographic] 情報処理学会研究報告. SPT, セキュリティ心理学とトラスト 2015-SPT-13(2), 1-8, 2015-05-07
[Readable] 【抄録】
この論文のテーマは、あくまで広告制御方法についてです。ですが、別視点から見た際には抄録内で興味深い内容が書かれていましたので、引用します。
我々はまず,ユーザのインターネット広告受信状況を調査した.その結果,Web サイト閲覧時にユーザが受信するコンテンツ総量に対し,広告数は 11.6%,広告容量は 7.9%,広告表示時間は 3.2%であった.
具体的な状況や調査内容が分からないのが悔しいところですが、制御方法を述べる前に現状を調査されているのはたしかなようですし、なかなか興味深い内容に思えます。
現状、Webサービスでお金を稼ぐとなると広告収入はセオリーの一つであり、簡単には切り離せない要素かと思いますので、調査データは多い方がよいかと。
[Title]HTML構造解析と機械学習に基づくイベント情報抽出システムの提案
[Authors] 廖 宸一 , 廣井 慧 , 梶 克彦 , 河口 信夫
[Bibliographic] 情報処理学会研究報告. UBI, [ユビキタスコンピューティングシステム] 2015-UBI-46(13), 1-7, 2015-05-04
[Readable] 【抄録】
こちらも本文は会員でないと読めませんが、抄録で簡潔に内容が述べられていますので引用します。
本研究は,店舗のホームページやブログからクーポンやキャンペーンなどのイベント情報を抽出する方法を提案する.この方法を利用してユーザはをひとつひとつの店舗のホームページの閲覧を必要とせず,イベント情報抽出の網羅性と効率性を支援できる.
こちらも簡潔に述べるなら、現状のGoogleが行っている事柄と一致しているかと思います。検索結果が表示された時点で事足りてしまうようになって来ていますので(もちろんまだ一部でしょうが)。
一見、各Webサイトには歓迎されない方向かと思います。が、例えば店舗誘導でCVするタイプのサイトであればむしろ良い方向です。店の住所や営業時間を調べるユーザーの手間を削減できるわけですから。
「必要なのはサイトに訪れてもらうことではない」という認識に立てば、いろいろと見えてくるものが違うのではないでしょうか?
結び
今回のおすすめは、やはり「動向に関する問いを対象とした検索エンジンの提案」ですね。この辺をイメージできるかどうかは、SEOの視野の範囲に影響するように思えますから。
別に完璧に理解する必要はなく(できればそれはもちろんいいですが)、概要と言いますかある程度の具体性をもったイメージを獲得してことには大きな意義があります。
どんな事柄であれ、モノがみえているかどうかで自身が抱ける確信は変化し、その影響は大なり小なり確実に結果に影響を及ぼします。
確信をもった行動が常に良いとはかぎりませんが、よくなかった場合でも次の仮説をたてやすくなるでしょうし、どちらに転んでも無駄はない、と思います。
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