デザイン変更とコンバージョン(以降はCVと記載)の関係について、以前ご依頼者の方にご質問いただきまして、その際に返信した内容を調整して記事にしたいと思います。
私見で偏った内容だと思いますので、その点は予めご了承下さい。
前提
テーマの対象が広すぎるので、まず以下のような状況を設定します。
- 運用中のwebサイトのデザインを変更する
- サイトやCVに関わるデータの用意はなし
上記の条件で、以下の質問をされたと仮定します。
- デザインを変更すればCVは変わるのか?
これでもまだ漠然としているのですが、少しは絞れたと思いますのでこの前提で話を進めます。
デザイン変更とCV
デザイン対象にもよりますが、多くの場合以下のように返答できます。
- デザインを変更すれば、CVに変化がでる可能性が高い
- 上昇するか下降するかは様々要因で変わる
相当にふわっとした返答なのですが、質問の具体性が乏しい場合の返答としてはこんなものでしょう。
以下ではもう少し条件を限定して書いてみます。
部分のデザインを変更する
サイトを構成するパーツのデザイン変更を行うと考えた場合。
変更した際の効果が分かりやすいのは、CTAのデザイン変更でしょうか。
変更前よりも他のリンクとの差別化を強化することで、直接的な変化を与えることが期待できます。
ただ、差別化がマイナスの影響を与える可能性もあり、差別化が常にプラスの効果になるとは限りません。
サイト内の要素に馴染ませる方が、クリックに対する心理的な障害は低くなってCVの向上が期待できる、とも考えられますので。
全体のデザインを変更する
ヘッダー、フッター、サイドバー、コンテンツ内の要素など、サイト全体のデザインを変更した場合。
凝った独自のデザインは記憶に残りやすくなるため、何度もサイトを訪れて検討する商材であればCVにプラスの影響が見込めます。
「あの時見た、あのサイト」という思い出し方が可能なのは、主に視覚的に強い印象を残せた場合でしょうから、どこかで見た同じようなデザインのままでは再訪があまり期待できないでしょう。
反面、検索上位にありさえすれば一回のアクセスでCVしやすい商材の場合、デザインを変更した所で再訪云々の効果はあまり意味を持ちません。
むしろ、他と似たデザインのほうがユーザーの習慣を利用できるため、学習コストを低く抑えてCVを簡易に目立たせることも可能でしょう。
このタイプは「CVまでの経路を整えるデザイン」が有効であり、キレイやカッコイイなどの視覚的に強い印象を残せるデザインではなく、計画や設計という意味でのデザインが必要となると考えられます。
検索とデザイン変更の関係
検索とデサイン変更の関係に関しても断言が難しいことばかりですが、以下が基本になるかと思います。
- 検索結果にはデザインが表示されないため、デザインを変更してもアクセス数は増えない
その上で、以下のような筋道で考えれば何らかの効果がある可能性が浮かびます。
- デザインが話題になり、指名検索が増えて流入UP
- デザインが話題になり、言及や被リンクが増えて検索エンジンの評価が上がり流入UP
- 大きなレイアウト変更を行ったため検索エンジンの評価が変更され、順位が上がり流入UP
1は短期的な効果であり、2と3は長期的な効果になると思われます。
ですが、評価が向上する保証はなく、仮に評価が向上しても順位に反映されるのかはわかりません。
デザイナーへの依頼とCVの変化
「デザイナーに依頼すればCVは向上するのか?」という疑問は、依頼を考えている方からすれば重要なポイントでしょう。
あくまで個人的な話ですが、私がこの質問をされた場合には以下のように返答しています。
- 依頼されても、売上げはまず上がらない
デザイン依頼時にデザインを検討するためのデータが無いため、デザイナーの経験だけでデザインを作らざるを得えないからです。
CVの改善方法としてPDCAサイクルのような流れが必要だとするならば、デザイナーの経験だけでは不足するのが道理でしょう。
なお、これはデザイナーの経験が無力だという話ではありません。
デザイナーのヒューリスティック評価として役割
デザイナーが無力ではないという説明として、ヒューリスティック評価との類似性を挙げたいと思います。
検索で調べていただいても良いのですが、個人的に分かりやすいと思った以下の書籍の133pから引用したいと思います。
- 書名:人間中心設計の海外事例
- 著者:Righi Carol,James Janice
- 出版社:近代科学社
- 出版年:2010/11/12
- ISBN:978-4163733500
開発初期の評価方法としてヒューリスティック評価という手法があります。これは、ユーザービリティの専門家が、よく知られている設計原則に照らし合わせて評価する方法です。これによってユーザビリティの問題点を事前に抽出することができます。
専門家がその分野の原則に基づいて評価することで、大規模な調査を行わずとも効果的な改善を行うことが可能です(調査など無駄だという意味ではありません)。
デザイナーがデザインの原則に従って制作することは、このヒューリスティック評価を取り入れているとも考えられますから、デザイナーの役割は軽くありません。
ただ、それだけでは足りないということです。
根拠となるデータがなくてもCVが改善する場合
根拠となるデータがなくてもデザイナー単独でCVが改善する可能性が高い例としては、以下の場合がわかりやすいのではと思います。
- 見づらいサイトを、見やすく調整するデザイン変更
極端な例を挙げると以下のような改善です。
- 赤背景に黄文字のサイトを、白背景の黒文字に変更する
少なくとも文字は見えやすくなり、その結果内容が伝わりやすくなるため、変更前より訴求力が向上してCVが改善するだろうと期待できます。
必ずしも「整える=CV改善」ではないため、間違いなく改善するとは言い切れないのが困りますが。
依頼者の「指示」と「判断」の重要性
データもなくCVの改善を目的としてデザイナーに依頼する場合、現実的な手段としては以下が重要になると考えられます。
- 依頼者による「指示」と「判断」
商材や顧客に対する具体的な情報や知識を持つのは依頼者です。
その依頼者を根拠としてデザインを確定していけば、デザイナーの勘や経験だけよりは可能性が高められるはずです。
そうすれば、デザイナーだけでは不足する部分を補うことも、原則に従ったデザインを各サイトの実態にあわせて変化させることも可能になるでしょう。
デザイン変更でCVの改善が成功している場合、依頼者側の判断や指示が優れてたからだ、と個人的には考えています。
結び
ここまでの内容にはあまり断言する部分もなく、全体的にあやふやでぼやっとしていると思います。
しかし以下のように強めにいえる部分もあります。
- デザインは、webサイトを構成する要素の1つである
デザインに限らず構成要素の1つを変えれば変化はあるでしょうが、全体から見て全くそぐわない変化ではマイナスの効果になりかねません。
そのため、全体で見た際にどうなのかという視点で判断する必要があるはずで、そこが改善の柱になるのではと思います。
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