文字レイアウトに困ったら参照できる「Typographic Systems」:書評

Typographic Systems
Typographic Systems
美しい文字のレイアウト、8つのシステム

新ブログでははじめての書評、と言ってよいレベルか疑問ですがともかくそれらしき記事です。

この本を購入したのは結構前なのですが、思いついて記事にする次第です。

基本的には本屋さんで中身を見ていただいたり、実際に手に入れてご覧頂くのが良いと思っていますので、あまり中身に直接はふれず横道にそれながらの紹介にしたいと思います。

お近くにジュンク堂さんでもあれば在庫があるかと思いますので、気が向きましたらぜひぜひご覧ください。

ちなみに、なぜ畳の上に置いているのかというと…。他の記事用に撮影した際のついでで撮影したからです。妙な写真ですみません。

「Typographic Systems」

ご紹介する本の書誌情報は以下の通りです。

  • タイトル:「Typographic Systems」-美しい文字レイアウト、8つのシステム-
  • 著者:Kimberly Elam 訳:今井 ゆう子
  • 出版社:ビー・エヌ・エヌ新社
  • ISBN:9784861005145

海外で出版された本を訳した本ですね。

概要

「Typographic Systems」というタイトルが表すように、タイポグラフィーのレイアウトについての本です。海外で書かれた本ですから参考として挙げられる例に日本語はありませんので、日本語の例を見たい方にはごめんなさい。

内容としては、例を引用しつつ効果的な文字のレイアウトがまるで事典のように収録されています。その中核をなす8つのシステムというのは、表紙にも書かれていますが以下のものを示しています。

  • Axial System(中軸システム)
  • Radual System(放射システム)
  • Dilatational System(拡張システム)
  • Random System(ランダムシステム)
  • Grid System(グリッドシステム)
  • Transitional System(転調システム)
  • Modular System(モジュールシステム)
  • Bilateral System(左右対称システム)

それぞれをどのような例を挙げ、どのように説明しているかは本でご覧ください。といっても、この8つの項目名を見るだけでも得るものがあると思います。

基本的には文字を一定の規則でレイアウトすることで、意図や美しさを表現しています。「赤が情熱」「青が冷静」のように色に託す機能と同じような機能を文字のレイアウトに求めてるわけです。

なお上記のシステム名を検索エンジンで検索すれば、各システムの意味が大体分かるかと思います。ですが、だからといってこの本を読む必要なしというのは早計、と言いますか浅はかかと。

著者の重要性

Web上で見られる情報は「誰か」が提示した情報です。稀に一つのオリジナルと無限のコピーのような関係もありえますが、大抵はそれぞれ書いた方々の視点が反映されています。

つまり、この本でKimberly Elam氏という個人の視点を通して提示された内容を読めることが重要なのです。

Kimberly Elam氏の内容は、簡潔にポイントや意図を解説し、例示されたレイアウトの見方を示します。いわば学ぶ道を示しているようなもので、重要なポイントを頭に入れて例をみればそのポイントに則した事柄を学べます。

なお、他の方の解説より優れているといっているわけではありません。あくまで、本を読む事でその著者の視点を得られるのが重要なのです。

形の模倣だけでは意味がない

この本は「読む」という使い方の他に「参照する」という使い方があります。

「読むと参照となにが違うんだ!」と思われる方は辞書を想像してください。辞書は一般的には読み物ではないので頭から最後まで見ませんよね?一部を参照するのみです。

さて、参照しだすとやってしまうのが「形の模倣」です。レイアウトの参考例だけを見て、つまみ食いのようにその形を取り入れてしまいます。

こういった作り方をすると薄っぺらい表現になりやすく、ともすれば危険な方法かもしれません。

薄っぺらにならないためには基本に立ち返ることです。つまり、何を表現するためにレイアウトしているのか、です。

8つの法則などは本質的には重要でありません。表現したい事柄があり、それを表現するために行われた試行錯誤の結果を法則性に基づいてまとめたに過ぎないのです。

「Typographic Systems」を参照される場合は、その意図から考えて参考にすることをお勧めします。そうすれば、自然とあなたなりのシステムが構築できるようになるでしょう。見た目を整えるためだけにレイアウトパターンを使うのではなく、必要な事柄を表現する手段としてレイアウトを使えるようになれば…。心強いとは思いませんか?

結び

久しぶりの書評のため手探り感が強いのですが、いかがでしたでしょうか?少しでもこの本を読んでみたいと思っていただければ書いた甲斐があるのですが。

なおこの本は、デザイナー職の方ならば結構お持ちなのではと思っています。知人のデザイナーさんも持っていましたし。といっても10人ぐらいに伺ったわけでもないので想像に過ぎませんが。

前述していますが、読み応えも使い出もある良い本だと思います。価格が高いと感じるかもしれませんが、「参照」という使い方の魅力を知っている方でしたらまずまずのラインかと。

書店で見かけましたらぜひ手に取ってみてください。得るものが多いはずです。

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