SEOに関する情報の多くは、Web上で完結したり大部分が済んでしまうサイトであることが多いように思います。成約(CV=コンバージョン)の対象もサイトからの申込や購入など。
しかし、当然ながらそういったサイトばかりがWeb上に存在しているわけではありません。
席数10程度の小さな飲食店、ビルの一室にある古着屋、ダンスや茶道のレッスンを提供する教室など、実際に来店してはじめてCV1件というところも数多くあるはずです。
この記事では、そういった実店舗を持つ小さなお店とSEOについて書いてみます。
一応制作向けのつもりですが、店主自らが考えなければいけない内容も含んでいます。大抵そういったところは特に重要な部分なので、打ち合わせで制作から話をする必要があるかもしれません。
基本は「地域名+業種名(商材名)」
メインとして設定し、常に状況を見ておきたい検索ワードは、セオリー通り「地域名+業種名(商材名)」です。
切り口を変えれば地域名を含まない形も考えられますが、来店という目的がある以上外せません。商材名の検索ボリュームが地域名のボリュームより大きいことはよくありますが、来店につながるワードとして有効性を検討すると地域名になるかと思います。
なお、地域名に絡むワードは、アクセス数の増加を狙うという意味だけではない重要性があると考えています。検索エンジンが認識している「地域名とサイトとの関連性」を窺い知ることができるからです。
結果が順位の上下にしか見えないのでわかりにくいかもしれませんが、「キーワードとの関連性(合致度)」は「リンクによる加点評価」と違うものだと考えています。ザックリ言えば、土俵に上げるためのものか、上がった後で評価を高めるものか、でしょうか。
地域名>業種名
来店をCVとする際、重要度が高いのは地域名です。
「移動可能な地域から探す」というのが通常の流れかと思うからですが、それ以外にも「移動先で何かを探す」という流れも多いと考えられます。
地域を限定しない検索の場合、ユーザーの要求はまだ漠然としている可能性が高く、そこをメインに狙うのはあまりお勧めできません。サブ的にテールとして狙うならよいとは思いますが。
地域名
まず、実店舗のあるサイトに対するSEOの方向として、大前提は地域名です。ローカルな固有名詞を含み、ロケーションを構成する要素となるすべてを含みます。
大阪でしたら、
- 「大阪市」や「北区」などの地名
- 「梅田駅」「通天閣」などのランドマークの名称
でしょうか。近辺にある「大丸〇〇店」「イオン〇〇店」などの大きめの商業施設も同様に考えられます。
これらの要素を含んだキーワードでアクセスがある場合、来店につながる可能性が高いユーザーをサイトに呼べたといえるでしょう。
なお、検索されやすい地名を意識する方が良い場合もあります。実店舗の立地を選択する際にターゲットが好む界隈を選ぶことも多いと思いますが、SEOでも同様です。
地域名を検討する場合はユーザーが実際に用いる言葉を調査して使うのが最善ですが、代替案として以下の方法が考えられます。
- Googleトレンド
- 地域情報紙
検索回数や発行部数を参考にすることで、大きく外すリスクを低減できるでしょう。
選んだ地名が「隣接する市区町村」「徒歩で移動可能な程度の距離」なら大丈夫だと思いますが、離れすぎるとユーザーに不信がられますのでほどほどにする必要はありますが。
サイト内での地域名に関連する語句の扱い
サイト内で地域名などを扱う場合は、会社概要やアクセス情報のページに記載するのが通常の方法かと思います。加えて、フッターやヘッダーなのど共通パーツにも店名や住所と共に記載します。
個人的にはあまりSEO的な効果を感じていないのですが、これらの住所情報に構造化マークアップを施すことも検討できます。
目的としては、前述した「地域名とサイトとの関連性」を高めるためです。
無意味に周辺地域をフッターに羅列してもあまり効果がないように思えますので、必要な要素を必要なだけ記述するスタンスがコントロールしやすくて良いです。
SEOを考える際には「もしかしたら引っかかるかも」という甘い期待でゴテゴテと記述を増やしたくなりますが、効果やリスクを認識すると自制しやすいでしょう。増やした所で該当の地区にあるお店を上回れる可能性は高くなく、また、下手をすればメインの地域名の関連性が薄まる可能性もありますから。
周辺情報の扱い
個人的には、周辺にあるスポットを紹介するようなコンテンツを大量に作成しボリュームを持たせることは、必須ではないと考えています。
来店するユーザーに対し、何かしらの良い効果をもたらすことができるなら別ですが、そうでないなら不要な情報であり、本来見てほしい訴求点をぼかしてしまいます。すくなくとも、サイトのメイン部分に含める要素ではありません。
周辺情報記載の一例としては、小さな中古カメラ店のサイトに「猫が集まる近所の公園」の情報を載せるなどでしょうか。「購入後のカメラや、購入前のカメラの試し撮りができます」のような流れであればよいかもしれません。
気兼ねなく撮影可能なスポットというのは助かりますし、周辺機材の販売強化やレンタルサービスも検討できますし、お店にもユーザーにも良い効果が期待できそうです。
業種や取り扱い商品、それらを求める顧客から検討を重ねることで、サイト内に掲載する情報の方向性も内容も固まってくるでしょう。
業種名や商材名
「カフェ」「本屋」などの「業種名」も必須です。基本的には実店舗の業態で決まりますが、「カフェ」「喫茶店」「紅茶屋」「コーヒー専門店」など言い回しや特色の強調の仕方で言葉自体は検討が必要です。
店舗の特色から考えることに加え、実際にいろいろなワードで検索をすることでメインとなるキーワードを推定できるかと思います。
なお、メインを抑えた上でですが、運営をする中でいろいろとサブ的な部分の変更や追加を行うことがあるからです。
「イタリアン」から「フレンチ」へとメインキーワードを変えることはないでしょうが、「カルボナーラ」から「ボロネーゼ」などへの変更は視野に入れておいた方がよいです。
サイト公開時ではできないことは多いため、運営中の情報収集を欠かさずに適宜反映し、より効果的なサイトを目指します。
「イタリアン」だけで地域全店に挑むのは大変でも、メイン料理を絡めればどの小さなお店でもかなり闘えるはずです。ある意味では棲み分けにもなり、それぞれが自然と特色を持てる可能性もあるでしょう。
大きなキーワードへの考え方
地域にしろ業種名にしろ、大きめのワードに固執している状況を目にすることがあります。
例えば「カフェ」や「ランチ」。例えば「大阪」や「東京」。大きな概念や括りで大量のアクセス獲得を狙うパターンです。
これらで1位になれば相当なアクセス数があるかもしれませんが、来店というCVを考えるなら貢献度は相当低くなります。
「大勢に見てもらえれば何人かは来店してくれるはず。」という考え方もあるでしょう。
しかし、その場合は来店頻度の可能性を考慮しなければなりません。どれほど魅力的なお店でも、多くのお金と時間をつかって遠方から毎週来てくれる方がどれほどいるのでしょうか?
その数が店を運営し続けるのに十分な額を定期的にもたらすのであればよいです。しかし高級店ならいざ知らず、単価1000円のランチを出す小さなお店ではまず無理でしょう。
そんな実入りの期待出来ないキーワードに固執するよりも、ローカルで来店の可能性が高いワードに意識をむけるほうがはるかに有意義です。
商圏と顧客への意識
通常、実店舗を構えるときは商圏を気にすると思います。「ここに店を出せばどんな人が来店してくれるのか」ということが大きなポイントになります。
出店計画時に「顧客になる可能性が高い集団」を調査によりあぶり出して判断するかと思いますが、SEOにおいても同様に考える必要があります。
小さなお店が安定的に収益を上げるには、リピートする客数と客単価が重要になるかと思います。そして、物理的に来店可能な範囲に住むか働いている方がその対象となるでしょう。
メディアに取り上げられて遠方からの客を獲得する方法もありますが、小さな店舗のキャパシティを考えるとそういう客はむしろ問題となります。10席のカフェに100人が一時的に並ぶよりも、1日に10席が3回転してそれが毎日続くようにするほうがよいはずです。
であれば、SEOで考慮するべきはそういった顧客にアプローチすることであり、大きなワードを気にする必要性は薄れます。
被リンクの購入判断
来店に直接的には貢献しにくい大きなワードではなく、実利のあるローカルなワードが必要だと認識出来た場合、被リンクを購入するかどうかを判断は比較的容易です。
ローカルであればあるほどボリュームは減少し、難度が下がるからです。また、1位であるインパクトも減少しやすくなります。
そのワードで1位にいるサイトがどうみても自店舗の来店を阻害するものでないならば、そのサイトを抜くためにお金を払う必要性や価値はありますか?
上げてみなければ分からない部分は確かにありますし、チャレンジすることは大切です。ですがもっと注力するべき部分があるのならば、必要なことを成してからのほうが安心ではないでしょうか。特に、ドメインの価値を落とす可能性のある行為を行うのであればなおさらです。
店舗サイトへのリピート要因
サイトを運営していて「リピートが少ない」という認識をもっている方は多いと思います。
この場合、単純な理由として「リピートしてまで見るものが無い」という原因が考えられます。
リピートさせる要因は様々ですが、店舗のサイトであれば情報の更新性は重要です。飲食なら日替わりや季節ごとのメニュー変更など「今日は何かな?」と思わせる類いのものです。
リピーターが増えないと嘆く前、リピーターに提示できる継続的な情報がないのかと頭をしぼる方が建設的です。店に魅力があれば自ずとアクセスが増える、ほど甘くはありませんが、魅力自体を提示できていないよりは可能性が高まります。
情報確認のためのリピート
住所や営業日などの基本情報を参照するためにリピートが増える場合もあります。この場合、検索から来店までの期間が短くなる可能性が高いでしょう。来店する前段階の行為である可能性が高いためです。
なお、新規ユーザーとリピーターはそれぞれの以下のような要素を調査することで実際の動きをすることができるかもしれません。
- 検索キーワード
- ランディングページ
- 閲覧ページ
リーピーターの場合、店名の検索結果のスニペットに住所や営業時間が表示されているとアクセスせずに終わる可能性もあります。来店に寄与することなので問題は無いのですが、アクセス解析では判断ができません。
ウェブマスターツールでアクセスに至らなかった検索数を把握したり、実際に検索してスニペットを確認することでアクセス解析結果の補強ができるでしょう。
検索エンジン外の行動
ここまで書いておいてきてなのですが、飲食店に関しては検索エンジンの重要性がなかり落ちると思われます。
食べログやグルーポンなど専門のサイトやアプリを利用し、メインの検索行動が終了してしまっている可能性があるからです。リピートの可能性が高いヘビーな食べ歩き好きユーザーは、利便性の観点からこの傾向が考えられます。
検索エンジンの出番は、おそらく場所や営業時間の再確認のための店名検索か、交通手段の確認ぐらいでしょうか。
この場合は店名での検索順位が重要となりますから、地域属性が無視される可能性も高くなります。店名の検索結果を常に確認し、対応を考えておいたほうがよいでしょう。
簡単な調査データ
以前の記事でも少し触れたのですが、30代辺りの食べ歩き好きの女性5名ほどにインタビューできた際の簡単な調査結果を箇条書きでご紹介します。いずれもスマホをメインで利用されている方です。
- 店を調べるときはアプリ
- アプリ内の検索結果ではフリー素材であっても写真があるほうがいい
- アプリ内で文字は打たずカテゴリーなどを選んで推移
- 検索エンジンで地域名で調べるときは事前調査の段階のみ
- 事前調査済みのため現地でスマホを使って調べない
上記は「必ずそうする」ではなくあくまで傾向です。
実店舗とSEOの関係
ここまで書いてきたようなことは、SEO的な意味合いだけで終わらせるべきではありません。
検索行動は欲求に基づくものである場合も多く、検索ワードから着想をえて実店舗のサービスや商品に反映するなどを行う方がより効果的です。サイトに引きずられるとぶれやすくなりますが、実店舗の運営を基本に据えて判断すれば活かせるものもあるはずです。
Web上でも実店舗でも重要なのは、「動いている」という印象を与えることです。実際には動いているけれどそう見えない、というのは動いていないのと同じです。また、動いているように見せかけているだけではリピートされる可能性を潰してしまいます。
リピートにつなげるためには、実際に動くことと動きを演出することが必要です。
老舗として「いつ行っても同じメニューと同じ味」というアプローチの仕方もありますので、そういうコンセプトで突き進むなら別ですが、相当にハードルが高いでしょう。多くの場合、経年での評価が必要になりますから。
検索結果に対する具体的な作業の一例
SEOに関して、私のスタンスとしては被リンク購入は薦めません。お店のサイト(ドメインというべきかもしれませんが)は潰しがきかず、実店舗同様に育てていくものだと考えているからです。
そうなると、サイト内部でどうにかしていくことになります。
内部で対応する場合、スニペットの内容を把握してその部分を中心に手を加えます。順位は操作できませんが、表示された情報は編集可能な場合も多いので有効に使います。
小さなお店であればあるほど特化した内容になりやすく差別化が容易で、スニペットの文字数であっても闘いやすいと言えます。
また、前述のとおり大きなワードを狙う必要性はあまりないので、見るべき範囲を狭めて効率的な作業が可能です。
検索回数や検索ボリュームや順位だけを見ても傑作結果に何がどう表示されているのか分からないので、キーワードを選んて決めた場合は実際に検索して確認することをお勧めします。
結び
今回の内容はかなりザックリです。店舗サイトがWeb上で集客を目論む場合、リスティングやSNSなどの活用も考慮するでしょうから、SEOだけ見ていては足りません。
特に、来店を目的にするならDMや折り込みチラシなどの有効性は大きく外せません。郵便局では個別の住所を指定せずに地域を指定して配送するサービス(「配達地域指定郵便物」)も存在しますし、折り込みチラシは配布範囲が明確でありコントロールがしやすいでしょう。
色々なWebサービスが出現し、誰でも手軽に多くの手段を利用できるようになり、そのせいで販促活動が「無料に見えるもの」により過ぎている印象も受けます。
Webを無視する必要はありませんが、「小さなお店でお金がないからWebで頑張る」というのでは難しいかもしれません。SEOに限らずWebに時間をつぎ込むよりも、チラシを刷って配る方が良い場合もあるでしょうから。
3ヶ月後を見る
お店を経営されている方と話す時に話題にでるのですが、大体リピートの期間を3ヶ月で考えているようです。
今の行動は3ヶ月後のためであり、今しないと3ヶ月後には客が来なくなるという認識です。新規OPENのお店が3ヶ月を過ぎたあたりで傾き始める場合、オープン時に来店した方にリピートしてもらえなかったのかもしれません。
「今日来店した方が3ヶ月後にまた来てくれるような仕事をする」ことが重要だといえそうです。
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