デザイン案としてサイト制作前に何かしらを提出する訳ですが…。受け取られた方はその案を、どのように扱っておられますか?「デザイナーが作ったんだからこれが最善!」「こんなのでいいの…?」「どういう意図でこうなったのだろう」などなどかと思いますが…。
この記事では、デザインを提出する側からデザイン案の扱いについて、少しばかりお話をできればと書いてみました。
「あくまで私の個人的な話」である点はここで強く主張しておきます。他の方がどうなのかは分かりませんし、一般論であるかどうかもわかりませんから。
また、私自身を土台とした内容でして、「デザイナーが直接依頼を受けている」という前提をご了解ください。間に営業やディレクターが入っている場合は、その方々がうまい具合にやっていただけると思いますので、この記事のようなことは気にしなくても良いかもしれません。
デザイン「案」
身も蓋もないですが、デザイン案と言っている以上、それは「案」です。完成品ではありません。ですので、
デザイン案を無条件に受け入れる必要は全くありません。
特に初回の案では、いろいろ意見を出していただいて案を改良していく方向で検討いただければよいかと思います。
意見を出す過程で「これ言ってもいいのかな?」という類いの感覚を覚えるかもしれませんが、とりあえず内部で検討していただいて、他の方も同意見ならデザイナーに投げる方がよいです。そのような感覚を共有して突きつめることも大切ですから。
デザイナーのデザイン案(特に初回)
「デザイナーに依頼しているのになぜデザイン素人が意見をいわなければならないのか?」や「デザイナーが作ってるのに完璧じゃないのはおかしい!」と思われている方おられるかと思います。
個人的な考えなのですが、デザイナーだけに任せていても実用に足るデザイン案は作れません。言い切っていいのかと言われそうですが、むしろ依頼者が関わらないのに「完璧なデザインを作れます」などとはとても言えません。なぜなら、
依頼者が関与しない場合、大半がセオリーや仮説に基づいて構築される
からです。実際にはもっといろいろな理由が挙げられるのですが、今回は都合上この理由に絞ります。
ここでいうセオリーや仮説とは「おそらくこうだろう」という想定です。大枠で言えば、以下のようなことがでしょうか。
- レイアウト(ヘッダー/フッター/H要素/など)
- ページ構成(TOページ/会社概要/サービス内容/お問い合わせ/など)
- 色彩構成
レイアウトやページ構成は、「これがあればサイトとして成り立ちやすい」というものをそろえることで、たとえ初回案であってもある程度の形にできます。色彩構成に関しては、コーポレートカラーやロゴデザインの色を元にして、サイトのキーカラーや色調を決めることが可能ですし。
これらを意識すれば、ご要望を伺っていない段階のデザイン案でも「全くだめだ」ということはすくないかと思います。どうであれ、見栄えは整えられますから。
「それらしきサイト」が欲しいのであれば、ここでデザイン案をいきなり確定しても良いでしょう。しかし、役に立つサイトが欲しいならばここで終わる訳にもいきません。
「それらしきサイト」のデザイン案ではだめならば、入念なヒアリングや調査、詳細な情報や具体的な要望の提示が必須です。そのサイトに何を求めているかによって必要なものは変わりますが、いずれにせよ依頼者の存在や要望が欠けていては実用に足るデザインにはならないでしょう。デザインによる問題解決を求めるならなおさらです。
意見を投げ「なければならない」
デザイン案を見た時にまずしていただきたいのは、求めるサイトに合致しているかどうかの判断です。
ご依頼時の目的を果たせると判断できるならそのままOKでも良いと思いますが、そうではないなら意見をデザイナーに投げなければいけません。投げ「てもいい」ではなく、投げ「なければならない」のです。
特に初回のデザイン案は要望を引き出すためのたたき台のようなものです。言葉や資料による打合せのみで具体的な事柄を検討するのは難しいですから、初回のデザイン案を有効に使っていただきたいです。
持ち上がった要望や疑問点を投げかけ、返答となる案を受けとり、更に検討を行って要望を伝え….を何度も繰り返します。その過程でデザインにしっかりとした命が吹き込まれていきます。
デザイナーはイエスマンでも独裁者でもない
デザイン案への疑問や要望をデザイナーにぶつけた場合、次のデザイン案には当然それらのことが検討されて提出されます。が、すべてが盛り込まれているわけではありません。
デザインのセオリーやユーザーの利便性を考慮して、要望を受け入れない場合もあるわけです。つまりは、
依頼者が検討した要望をデザイナーが検討して返す
ことになります。ここも重要なのですが、デザイン知識の有無にかかわらずにとりあえず要望を投げていただければ、デザイン知識のあるデザイナーがその視点で調整を加えます。簡単に言えば、「目が痛いほどのどぎつい色使い」や「アンバランスな大きさのボタン」のような要望を、おかしくない程度にまとめたり抑えたりします。
イエスマンのように何でもかんでもハイハイ言っているわけでもありませんし、独裁者のように無理矢理押し付けるわけでもありません。
ですから、安心していろいろ投げていただきたいと思います。「デザイン案を覆すような要望はだしづらい」などと恐れたり、「いいか悪いか分からないから言えない」などと悩む必要はありません。まずは投げてもらえれば検討できますから。期間やコスト的な問題から反対することもありますが、そこから修正の要不要を判断していただければよいのです。
言いにくい要望や疑問というのは、後々になって膨れあがりやすいものです。致命的な事態になる前に対処する意味でも、その場その場で解消した方が理にかなっているでしょう。
デザイナーの受け取り方、の一例
あくまで個人的な意見なので、一例としてご覧いただきたいのですが。
デザイン案への修正依頼をいただく場合、依頼者の要望から外れたという意味で申し訳ない気持ちになります。ですが、怒りや恨みなどは感じません。ましてや「口を出すな!」とは思いもしません。
デザインの構築に関してデザイナーならそれぞれ一家言があるかとは思いますが、「作って壊してまた作る」という感覚はそれなりに共感を得られるのではと思います。これが正しいならば、修正依頼によって壊すことも想定内の流れにすぎません。
質問への回答
質問を受けた際にはデザイナーはできるだけ応える、と思います。この返答がデザイナーにはよい気付きになると思いますし、有意義な事柄です。質問があった、ということは見ただけでは理解しにくいということですから。レイアウトにしろ装飾にしろUIにしろ導線にしろ、ユーザーの視点をより強く意識して考え直すポイントと言えます。
暗示的な表現を意図していたり違和感を利用して役割を達成させる意図がある場合には、そのように返答して説明します。しかし、依頼者が最終的な判断としてNGを出すならば、そこは修正するまでです。依頼を受けて作成しているので、修正前のデザイン案に妙なこだわりは持ちません。
説明しがたいこと
説明できることばかりなら良いのですが…なかなか説明がしがたいこともあります。これを言葉にすると、カンや経験からくる判断、という所でしょうか。
「カンなんて不確かなものを」という感覚はもちろん分かるのですが、例えば職人を思い浮かべていただけると理解しやすいかと思います。工作機械では加工できない職人の技がありますが、あれは長年の反復によるカンと経験の賜物のはずです。
こういった事柄は質問されればなんと説明しようと思いますが、下手をすれば説明ではなく説得になりかねず、あまりよい結果を生まないかもしれません。こういう場合は質問が出た時点でだめなのかもしれませんね。
対応の限度
前述で少し触れましたが、制作が進んでからの方向転換は非常に困ります。例えば、内部の構築も完了していざ納品!という段階での作り直しです。しかし、もちろん要望や指示に対してただ単に「できません」では通りませんので、期限の延長や追加の見積もりを打診することになるでしょう。
デザイン案の段階で修正を繰り返すメリットはここにも現れます。つまり、
早い段階で諸々を固めることができ、最終段階で大きな方向転換が発生しにくくなります。
また、やり取りの過程で双方が発言しやすくなりますから、その後のやり取りも結果的にスムーズになるでしょう。
修正回数の制限
修正依頼に対して「無制限につき合ってくれる」というのは双方にとって良い結果にはならない場合もあります。回数制限は制作側のコストの問題が理由というだけでもないのです。
デザイン段階にとどまりませんが、作る期間が長ければ長いほど、当初想定していたゴールが動いてしまう可能性が高まります。デザイン案を見慣れてくると依頼者自身がある程度の見識を身につけることになり、視野が広がるからです。また、時間の経過によりサイトに求める事柄が変化する可能性もありますし。
期間が長引くほどぶれ幅は広がりやすいので、強制的に回数や期間を決めて動く方が良い結果を生みやすい場合があります。制限のある契約を結んだなら、依頼者側は修正依頼を出すために根を詰めて社内で話し合う、ぐらいがよいと思います。
もっとも、依頼者とデザイナー双方が意識していれば、制限がなくとも異常な修正回数にはあまりならないとは思いますが。
結び
下書き段階でかなり広がってしまったのですが、削って削ってなるべく一点に絞ってみました。多少なりとも伝わりやすくなっていれば良いのですが…。
デザイナーは繊細で打たれ弱いと思われているかもしれませんが、仮にそうであっても、仕事なので要望に対しては何かしらの答えを返すものです。疑問点や不満点はなるべく早い段階で伝えていただいて、後々の障害を取り除く方向に進むのがよいかと思います。
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