レンズ紹介は現時点では今回で最後です。標準レンズを除けば手持ちのレンズは3種類ですから。
一番最後に購入したのはNikonのレンズ(ニッコールともいいます)ではなく、Nikonのカメラに使えるサードパーティーのレンズ「AT-X 124 PRO DX II 12-24mm F4」です。
手持ちのレンズの中では標準レンズ「AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR」の広角側が一番の広角でしたが、それよりももっと焦点距離が短い広角レンズでして、魚眼レンズ(フィッシュアイ)の一歩手前といった雰囲気です。
広角故に形のゆがみがきついのですが、だからこその非常に有能なレンズでもあります。
「AT-X 124 PRO DX II 12-24mm F4」
冒頭で述べましたが、「AT-X 124 PRO DX II 12-24mm F4」はNikonのレンズではありません。Tokina(トキナー)という会社のレンズです。
Nikon製のレンズはNikonのカメラ用ですしCanon製のレンズはCanonのカメラ用ですが、Tokinaは同じレンズをNikon用とCanon用で発売していたりします。今回の広角レンズもNikon用とCanon用の2つが存在しますのでどちらのカメラを持っていても使えます。
サードパーティーのレンズは、種類にもよりますがメーカーの純正品よりも安い場合が多く、時には純正以上の性能を持っているレンズすらあります。値段的な安さで選ぶだけではなく、性能的にもサードパーティーレンズを検討に入れるべきです。
魅力の広角レンズ
広角レンズの魅力はやはり写る範囲の広さ。100mmや200mmにはない広がりのある写りが特徴です。
望遠レンズは一部を切り取る様な写り方になり、被写体と奥の景色を狭い範囲で大きく写せます。反対に広角レンズは全体を広く高く撮るので、中心の添えた対象が小さく写ります。
特定の被写体以外は写って欲しくない場合には望遠レンズのようなレンズが良いのですが、景色などの空間を撮影する場合には広角が最適な場合も多いでしょう。
広く写すことができるこのメリットは、撮影で距離のとれない被写体の撮影にも向いています。広いが故に遠く広く写すことができると同時に、近くを広くも写せるわけです。
広角レンズのデメリット
広角のデメリットはなんといっても形のゆがみです。まるで中心に消失点があるように、垂直であるはずの部分が中心にむかって斜めに写ります。
右上段の写真は広角レンズのゆがみが強くでていますので、どのような写りになるのかが分かりやすいかと思います。
一見パースの効いたダイナミックな写りに見えますが、よくよく見ると薄っぺらく見えることもあり一概によい効果ともいえません。そのため、画像処理ソフトのゆがみ補正で垂直や水平を補正することもあります。
実際にどの程度歪んでいるのかを示すために、この写真の左下を切り取ったのが右下段の写真です。赤線が垂直線で、青線がゆがみのために傾いた角度を示しています。
この点を補正することで前段落のような写真になります。もっとも写真下部にあるビルの垂直を優先したために、上部がかなりいびつな仕上がりになってしまいました。とはいえ、この写真のように空の場合はまだ見られるレベルかと思います…。
しかしながら、これが建築物の室内を撮影した写真だと、床付近はよくても天井がダメとなる使えない写真と化します。使えない写真にしないために、後述する対策が必要になります。
内観写真撮影の切り札
「AT-X 124 PRO DX II 12-24mm F4」を購入した最大の理由は、室内を撮影するためでした。購入前の最大の広角は標準レンズの18mmでしたが、ズームレンズはギリギリの焦点距離にあわせると画質が落ちるのと、18mmでは必要な画角が得られず撮影が無理だったからです。
望遠側の1mm2mmは微々たるものですが広角側では大きな影響があります。
右の写真は「AT-X 124 PRO DX II」の12mmと、35mm単焦点レンズの「AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G」での写りの違いです。補正はレンズ補正でゆがみの調整はしていませんので、普通に撮るとこのような違いがでます。
できれば室内の写真を載せたかったのですが、用意できなかったのでご勘弁いただきたいと思います…。
なお、室内撮影と書くと物撮りと同じ意味になりそうですし、言葉的にどう表現すればよいのか少々悩みました。室内「を」撮影するのであって室内「で」物や人を撮影する訳ではありませんので。
調べた所では、いわゆる建築写真というジャンルの内観写真という名前になるかと思います。そこで、以降は内観写真と記載することにします。
広角レンズと内観写真
前述しましたが、広角レンズは広く写ります。これは撮影距離があまりとれない状況でも、広い画角で撮れることを意味しています。
例えば、6畳程の室内の様子をその部屋の入り口から撮影する場合。後ろは通路壁で下がれず、横にずれれば部屋中心にレンズを向けることが不可能な状況です。
この状況で100mmのレンズを使用すると部屋の中の小物ぐらいしかとれません。35mmでも壁の一面がある程度写るぐらいでしょう。
ここで「AT-X 124 PRO DX II 12-24mm F4」を12mmで使うと壁と天井が程よく入る写真を撮ることが可能です。部屋全体の雰囲気が分かる写真が必要な場合、天井と床の両方がフレームに収まることは重要なの条件となります。
そのため、パノラマ撮影のように合成でもしない限りは広角レンズを使うしかありません。なおこのレンズは、ズームレンズながら広角側ギリギリの12mmの写りも良いようなので安心して使えます。
カリカリの写り
「AT-X 124 PRO DX II 12-24mm F4」はカリカリに写ります。
カリカリというのは、例えば35mm単焦点レンズの「AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G」のような美しいボケ味とは逆の性能で、形が明確に写りやすい状態です。補正時にシャープネスをかけることはあるかと思いますが、この「AT-X 124 PRO DX II」はそれほどシャープネスをかけずとも使用可能な写真が撮れます。
内観写真の撮影においては形と同様にこのカリカリ感が、壁の硬さやフチのエッジを際立たせてくれます。
内観写真の撮影のポイント
個人的に注意している室内の撮影時のポイントといいますかコツらしきものを少々。
本の受け売りだったり、撮影における一般的な事柄でもあるので特に目新しいものではありませんが、それだけに効果は高いと思います。
三脚必須
室内は大抵外より暗いものです。「AT-X 124 PRO DX II」はF値がF4なのでやや明るめのレンズではあります。しかし、手にカメラを持って暗めの室内を撮影できる程ではありません。
シャッタースピードの速度を上げて手ブレを防ごうとする場合には、絞りを開放する方法があります。ですが開放にしすぎるとボケが出てきます。ある程度絞り気味で撮影するほうが求められている写真を撮りやすいため、絞り気味でも明るく写せるようにシャッタースピードの方を調整して遅くする必要があります。
上記の理由により、三脚は必須といえます。
また、後述する理由にも関係しますが、狙ったポジションにカメラを設置するためにも三脚が必要です。
部屋の高さの中央で床から垂直に構える
内観写真では形のゆがみが許されない場合もあるようで、いくら広角で部屋が写せても壁の垂直がゆがんでいては元も子もありません。その後の補正でなんとかする訳ですが、もともとの写真を撮影する際の準備によって後の作業は楽になり、仕上がりの精度が増します。
ゆがみをできる限り無くすポイントは、水平な状態を保ち、天井から床までの中間に、垂直な壁と並行になるようにカメラを設置することです。
水平を保った状態で、部屋の高さの中心から撮影することで垂直のゆがみを軽減できます。壁と並行になることで下からのあおりや上からの俯瞰のパースを排除できます。
純粋、といっていいのかわかりませんが、広角レンズの特性のみのゆがみであれば補正は容易です。
撮影時間の選択が重要
商品撮影などの物撮りと違い、部屋は広いので単一の照明で全ての状況をカバーできません。求める写真を撮るために窓などの外光を利用したり、逆に外光を遮断する必要があります。
つまり、撮影時間が重要になります。白い室内を朝の爽やかな雰囲気で撮影したいなら朝に撮る方が良いですし、高級マンションを暖色の灯りでゴージャスにとなったら外光がない夜に撮影する方が良いでしょう。
撮影に向くのは曇天で光が拡散する状態が一番と言われますが、これも考慮するなら天気も重要になります。
なお、適切な機材を必要な数だけ用意してセッティングできる場合はこの限りではありません。私のように弱い照明が二つしかないのでは話になりませんが。
ちなみに、夜間で部屋の照明だけで撮る場合はシャッタースピードの鈍化で対応できます。何せ相手は静物。仮にシャッタースピードが10秒でも問題はそれほどありません。
レンズの絞り値
内観写真ではボケが命取りになる場合もありますので、絞りをきつくして撮影したくなるものかと思います。三脚も使つのであれば、相当に絞れますから。
ですが、絞りすぎると光の回折が起きて像がぼやけます。ですので、適度な所で止めないといけません。
私は内観写真の撮影経験が乏しいので適切なF値を把握できていないのですが、F11ぐらいから始めるようにしています。F値が開放気味で出る多少のボケは補正できますから。
実際には露出やシャッタースピードなど他の設定と組み合わせますので、絞りだけに頼るわけでもなく一概に言いがたいところではあります。
結び
今回も長くなりました。が、それほど特徴的で有益なレンズということなのであやむを得ない、と思いたい所です。
「AT-X 124 PRO DX II 12-24mm F4」は特定の目的で購入しましたが、それ以外でも利用できているため有益な買い物でした。純正に比べて価格が安く手が届くレンズである点もポイントが高く魅力的ですね。いくら必要でも、たまに使用する撮影機材の一つに10万などは出せません。
ちなみにニッコール(Nikon製のレンズ)で「AF-S DX Zoom-Nikkor 12-24mm f/4G IF-ED」という焦点距離が同一のレンズはありますが、希望小売価格は170,100円です…。
なお、純正でないということは仕組みが違うということでもありまして、AF(オートフォーカス)とMF(マニュアルフォーカス)の切り替え方法や、ピント調整のためのフォーカスリングを回す向きが違う場合もあります。色々なメーカーでレンズを揃える場合には、その辺りの使いやすさも考慮した方が良いでしょう。
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