相当に久しぶり(前回の記事は2014年1月でした…)の資料紹介です。
毎回書いていますが、主にNII(国立情報学研究所)で検索して見つけた論文を取捨選択しています。
できるだけ本文が読める資料をとは思っていますが、新しい論文であればある程公開はされず、古ければ古い程電子化はされていないのが実情です。
前提
主にCiNiiで検索した内容を記事にしています。
凡例
以下に凡例を記載します。
- 本文を読める文献は【本文】と記載
- 本文データ無しや会員のみ閲覧可能は【抄録】と記載
- 本文も抄録もなしは【書誌事項のみ】と記載
文献一覧
[Title]GOOGLE 日本語Nグラムの分析⑴ : 「イッパヒトカラゲ」の足跡
[Authors] 小野 芳彦
[Bibliographic] 北海道大学文学研究科紀要 145, 33-46, 2015-03-20
[Readable] 【本文】
Nグラムについては論文冒頭に説明がありましたので引用します。
Google社がクロールしたインターネット上の日本語Web文章の2007年7月の時点のスナップショットをもとに,Google社研究員の工藤拓・賀沢秀人両氏が日本語の単語n-gramとその出現頻度を抽出してまとめた大規模言語リソースである(藤・賀沢 2007)
論文自体は2015年に掲載されたものですが、その論文を書くための大元のデータは2007年のものである点に注意が必要かもしれません。
この論文では、「イッパヒトカラゲ」という単語に絞って誤用の実態を調査しています。
内容自体が興味深く、どのように誤用が発生し定着したのかの考察などもあります。ここから考えるなら、今後も同様のことは起きますし、以降も検索に用いられるワードが誤用されたものにどんどん変わっていくのかもしれません。
特に音声検索のように割とラフに検索される(表示された文字が少し違っても許容されやすそのなので)状況が増えれば、変化のスピードは早まるのではと思いました。
[Title] プロダクトとプロセスからみた剽窃の分析 (学習支援環境とデータ分析/一般)
[Authors] 宮本 淳 , 仙石 昌也 , 山森 孝彦
[Bibliographic] 日本教育工学会研究報告集 15(1), 21-26, 2015-02-28
[Readable] 【書誌事項のみ】
非常に気になるタイトルですが、本文どころか抄録もありませんので内容が一切わかりません…。
タイトルと掲載媒体から教育関連であるのは間違いなさそうですが、「剽窃」というものをどのように分析しているのかは興味がわきます。
関東の方は国立国会図書館で閲覧可能(請求記号:Z7-3321 巻号数:15(1):2015.2.28)です。
地域に関わらず、最寄りの地域図書館からでも雑誌名とページが分かっていれば複写依頼ができますので、興味のある方はぜひ。
[Title] ポータルサイトのアクセス解析事例 : 集合知メカニズムを活性化する方策と有効性 (特集 集合知メカニズムとコミュニケーション場の設計と応用)
[Authors] 熊坂 治 , 鈴木 定省
[Bibliographic] 日本経営工学会論文誌 65(3), 219-226, 2014-10
[Readable] 【本文】
CiNiiでは本文がみられませんが、J-STAGEでは読めましたのでそちらにリンクを貼っています。
論文では「ものづくり革新ナビ」というポータルサイトのアクセス解析についてです。
Facebookaページやメールマガジンを含めて、情報発信とその効果(クリック数など)をしっかりと数値で(正確性はわかりませんが)記載して考察しています。こういった事柄をビジネス系の記事で見たりしますが、学術系の論文はさすがにかっちりしているといいますか、データの扱いが丁寧な印象を受けます。ちなみに、以前も同種の論文を紹介しています。
「検索トラフィック」「参照トラフィック」「ノーリファラー」「SEO」など、Web関連の方にはおなじみの単語も出てきて、案外読みやすいかもしれません。
気になるのは、ポータルとはいえ利用者が一般の方ではなさそうな点です。ユーザーの属性を考慮しつつ読む方が良いかと思います。見た範囲では、ユーザーの人物像的な検証や、属性、文脈などもなさそうです。
[Title]他者の検索履歴を利用した研究者のための論文検索システムの提案
[Authors] 杉山 暢彦 , 澤本 潤 , 杉野 栄二 , 瀬川 典久
[Bibliographic] 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) 2014-HCI-159(11), 1-6, 2014-07-2
[Readable] 【抄録】
おもしろそうなタイトルですが、抄録しかみられません(情報処理学会の会員ならみられそうですが)。そこから一部引用します。
論文検索は目的に沿った論文を探すために、より深くページを辿り、多くのキーワードを使う必要がある。そのため論文検索は、少数の優良なページを探したら活動を終了できる通常の検索活動とは大きく異なる特徴を持つ。そこで、本研究では他者の検索結果を利用する事で論文検索活動を容易にするシステムを提案・実装した。
他人の検索履歴を利用する、というのは面白いと思いました。現状のGoogleでもサジェスト的なものは同じ意図でしょう。ただ、この論文はGoogleなどのそういった仕組みの解析や論考などではなく、あくまで自前で作る場合の提案のようです。
Googleと同じ仕組みを同じ方法で作っているとは思いませんが、読めば何かしらの気付きはあるかもしれませんね。
[Title]学会発表,看護研究など,あらゆるシーンで便利度120% 機能を最大限に活用した IT仕事術(第5回)Google検索を使ってみよう
[Authors] 斎藤 智彦
[Bibliographic] 看護技術 60(6), 66-72, 2014-05
[Readable] 【書誌事項のみ】
本文は読めませんが、少し気になったので。
この論文が載っている「看護技術」は看護師の方からすればメジャーな雑誌かと思います。専門誌ではあるのですが、通常Web検索などにあまり関心をもたなそうな(勝手な想像ですみません..)層である印象もあり、そういった方の読む雑誌に載ることには興味があります。
検索だけに関わりませんが、狭い範囲での常識的な事柄が他の場所で紹介される場合、内容の是非はともかくその際に強い印象を与えることが多々あります。それが色眼鏡になるのか下駄になるのかはわかりませんが、影響はあるでしょう。
仮にですが、この雑誌が出た時にその方面の検索結果やアクセス解析に変化が生じたのであれば、深堀してみると面白いかもしれません。
[Title]ソーシャルネットワークにおけるフォロー集合分析に基づく実世界イベント分類手法
[Authors] 河野 慎 , 米澤 拓郎 , 中澤 仁 , 川崎 仁嗣 , 太田 賢 , 稲村 浩 , 徳田 英幸
[Bibliographic] 情報処理学会論文誌 56(1), 72-82, 2015-01-15
[Readable] 【抄録】
論文の抄録を読む限りでは、Web上に発信された個々の発言などから、その元となる現実のイベントを分類しようということのようです。「現実のイベント→Webでの情報(SNSなど)→現実のイベント」という流れは面白いと思います。
実は気になったのは上記の部分ではなく、以下の部分です。
Yahoo!クラウドソーシングにおいて一対比較法を用いて大衆性に基づき分類した結果を取得し,本手法を適用した解析結果と比較・考察を行った.その結果,大衆性に関してクラウドソーシングを用いた調査結果と回帰分析による提案手法の分析結果に一定の相関性があることを示した.
個人的に、Web上で行われているアンケート調査には疑念をもっていました。アンケートの実施対象者が、お小遣い稼ぎだったり性別や年齢などが自己申告だったりと、信頼性が何ら保証されていないのではと思うからです。
しかし、この論文ではそういった調査でも相関性があると書かれています。
もちろん、実際の調査内容や結果がわからないので判断のしようもありません。ありませんが、抄録にこう書くレベルには相関性があったはずです。少々考え方を見直さねばならないかもしれません。
[Title]クラスタ分析を用いた商品レビューに含まれるオノマトペに基づく商品カテゴリの類型化
[Authors] 内田 ゆず , 荒木 健治
[Bibliographic] 人工知能学会論文誌 30(1), 246-256, 2015
[Readable] 【本文】
テーマも内容もとても興味深い論文です。そして、ライティングの視点ではかなり重要な印象です。
この論文はオノマトペに焦点を当て、商材とオノマトペの関連を数値化やグラフ化して掲載しています。
論文内の情報を参考にすれば、商材とオノマトペの関連を把握することでき、商材をアピールする際の武器を手に入れられるかもしれません。
統計的に有為な調査結果であれば、その結果は個人の一般化された結果として一定の効果を見込めます。この手法は狭い範囲に刺さるものではないとは思いますが、広範に訴求可能な表現である可能性が期待できるのではないでしょうか?
具体的な事柄はここでは説明しませんので、是非本文をごらんください。
結び
最後にご紹介した論文「クラスタ分析を用いた商品レビューに含まれるオノマトペに基づく商品カテゴリの類型化」がお勧めです。ただ読むだけでも面白いので。
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