携帯性と応用力に優れた照明「スピードライトSB-700」:撮影機材紹介

モノブロックほどかさばらないながらも、環境と用途によっては充分に役立つスピードライト。2012年時点での最新機種ではありませんが、少し古くとも充分使える照明が「スピードライトSB-700」です。

モノブロックよりは安価ですが、モノブロックより手軽かつ柔軟に使えそうな照明です。何より重さが電池を入れて450gであり、ロケに必要な携帯性が抜群。

残念ながら使用歴が浅くまだまだ使い方を研究中でして、この記事の内容は他の機材に比べると弱めです。何かの参考になれば良いのですが。

携帯性と応用力に優れた照明「スピードライトSB-700」

Nikonの「スピードライトSB-700」
Nikonの「スピードライトSB-700」
※台座付き

「スピードライトSB-700」(以下、SB-700と表記)は、見出しのとおり携帯性と応用性に優れた照明機材です。私自身、使ってみてこれば便利!と驚いた程です。何事も使ってみないとわからないものですね…。

SB-700はスピードライトと呼ばれる種類の機材でして、基本はカメラ上部に取り付けて使います。現在のデジタルカメラには大抵本体に内蔵型のフラッシュがついていますが、その内蔵フラッシュの強化板と考えていただければ分かりやすいかもしれません。

SB-700は2010年の11月26日に発売されたNikon純正のスピードライトであり、2012年現在でのスピードライトの最新型はSB-910。

SB-910からSB-700までを遡ると、間にはSB-900とSB-800があります。が、Nikonサイトでみる限り、現在はSB-800とSB-900は製造されていないようです。この点から考えてもSB-700は優秀なスピードライトと言えそうです。

スピードライトとは

カメラの上部に付けて撮影
カメラの上部に付けて撮影。順光だとこうなります。

スピードライトと書いていますが、クリップオンストロボや、単にストロボとも呼ばれています。

以前記事にしたモノブロックとは違い、電池(単三電池4本)を使うため電源確保の必要がありませんし、コンパクトで軽量。政治家や芸能人を追いかける機動性が必要なカメラマンなどは大抵スピードライトを付けており、持ち運びの良さが伺えます。

用途は単純で、光量の不足を補うために使用します。暗いとシャッタースピードが遅くなり人間などの動く被写体がぶれてしまいますから、スピードライトで光量不足を補います。通常の明るさでは捉えられない動きの一瞬を捉える撮影方法にも向きます。

カメラに付けた場合は順光(レンズの向きと同じ方向に向かう光)になりますから、被写体の前面に光が強く当たります。被写体の影はカメラ側と反対方向に伸び、通常のカメラ内蔵フラッシュと同様に立体感の乏しい写りになります。
反面、光が当たる範囲と当たらない範囲で明確に見え方が異なるため、背景から被写体を浮き上がらせるように際立たせることが可能です。

直線的で非常に堅い光であり、できる影も濃くパキッとしています。柔らかく被写体を包み込むような拡散光ではありません。例として右のような写真を撮りましたが、ご覧の通りの見映えになります。

この点だけをみると物撮りなどの商品撮影には使えないようですが…実際にはかなり有効です。

設定項目が豊富

SB-700の背面
SB-700の背面

スピードライトにはONとOFFしかボタンがない訳ではありません。思った以上にいろいろ設定できるようです。

詳細は以下のNikonサイトをご覧下さい。

簡単に書きますと、一番分かりやすいのは光量の調整機能。-3.0EVから+3.0EVまで調整が可能です。ちなみに、EVは明るさを表しています。

発光モードとして3種類(i-TTL 調光モード/マニュアル発光モード/距離優先マニュアル発光モード)用意されており、特に調光機能が良いようで、対応機種に限られますが自動でレンズなどに対応した調光を行えます。

配光タイプの切り換えが3種類(スタンダード配光/ 中央部重点配光/均質配光)あり、光の質をある程度コントロールできます。スライド式で内蔵されているのですが、光を拡散させるワイドパネルと天井バウンス時に前面の被写体に僅かに光を当てる反射板もあります。

後述しますが、単体でリモートモードの使用が可能です。なおリモートには2種あり、2機以上であれば親機として設定するカメラに付けたSB-700を発光させずにほかのSB-700と連動させることも可能です。

発光部の向き変更も可能で、公式サイトのSB-700の数値を引用しますと、

垂直方向: 上方向90°~正面~下方向7°(クリック:下7°/ 正面/45°/60°/75°/90°)
水平方向: 左方向180°~右方向180°(クリック:正面/30°/60°/75°/90°/120°/150°/180°)

となっており、上半球をほぼ全方位カバーできます。後述しますバウンスに際して、この可動域の広さは重要な機能です。

GN(ガイドナンバー)

GN(ガイドナンバー)値を理解していれば更に有効で正確な設定が可能なのですが…。ご説明できるほどに理解していませんので、ここではNikonサイト内のページを参照として挙げさせていただきます。

おおざっぱに言うと「ガイドナンバー(GN)=距離(m)×絞り値(F値)」で得られる値で、最適な設定を割り出すための基準となります。基本的にGNが大きいほど光量が上がりより遠くに光が届きますから、いろいろと使い勝手が良いでしょう。

連続発光制限

発光部と電源部(電池)が本体に内蔵されているため、発光させる度に熱が溜まります。試し撮りの際にも結構熱いと感じることもありました。

連続発光しすぎると、温度上昇の警告音が鳴ったり強制的に発光できなくなる機種もあります。一見発光できなくなる方が問題のように見えますが、発光し続けると本体が熱を持ちすぎて焦げたり溶けたりするようで、結果的には強制終了の方が良さそうです。

現在の機種であれば、通常使用でそうそう発熱警告は出ないようですし、ヘビーに使わなければあまり気にせずとも良いかもしれません。

スピードライトとブツ撮り

スピードライトを商品撮影で活かす場合に重要なのがバウンスとリモート。

現在のスピードライトではこの2つ使い方は標準的なもので、箱に同梱されている説明書にすら書かれています。スピードライト自体にバウンスやリモートがやりやすい仕組みが導入されており、是非マスターしたい使い方です。

天井バウンス

SB-700の天井バウンス撮影
SB-700の天井バウンス撮影

一番重要なのが、光をバウンスさせること。

バウンスとは壁に光を反射させることで、照明の光を直接光から間接光に変えることができ、柔らかい拡散光を作り出す方法です。前段でスピードライトは堅い光と書きましたが、その特性を違うものに変えられます。

ちなみに、モノブロックのアンブレラも同様の目的です。

ブツ撮り、特に食品のテーブルセッティングにはいくつかセオリーがあり、照明におけるセオリーの一つが、被写体上部から光を当てるライティング。俗に「天トレ」と言われるもので、上部のライトをトレーシングペーパーで面光源の拡散光とし、被写体全体に柔らかく光を回します。

料理の盛りつけとして「高さを出す」という盛りつけの方向性がありますが、順光に比べて天トレは立体感が出しやすく、絵作りがしやすいと言えます。

スピードライトの天井バウンスはこの天トレと同様の効果を得られます。ただし、反射する壁の色によって反射光の色がかわるので注意が必要です。被写体の色を正確に表すひつようがあるならば、なるべく白い天井がよいでしょう。

なお、スピードライトに限らずモノブロックでも通常の照明でも同様の手法が使えます。

壁バウンス

逆光気味にバウンスさせた例
逆光気味にバウンスさせた例
上部からの光(天井バウンス)
上部からの光(天井バウンス)

天井バウンスと同じことではあるのですが、前後左右の壁に光をバウンスさせます。

天井バウンスは基本的に上からの光ですから、影は反対の下にできます。この場合、通常影のできる部分は少なく立体感がそれほど強調できず、劇的な絵作りには不足気味です。

そこで、横方向からの光が必要になります。左右からの光であれば左側面全体が影となり、立体感が強調されます。逆光になると前面が影になるため、より迫ってくるような印象を与えられます。

このようにカメラ上部に付けてスピードライトを使用する場合には、どこにバウンスさせるかで絵作りが可能です。天井のみならず周囲の壁、あるいは壁のかわりになるものを設置して求める効果を狙わければなりません。

右の写真は柿の後ろにレフ板を設置し、SB-700の光をバウンスさせて撮りました。天井バウンス(下段の写真)に比べて、手前の影がやや濃くなっているのがお分かりいただけると思います。

今回はカメラの上にスピードライトを付けていますので、被写体の奥に光を向けると同時に被写体の前面に光が当たってしまいます。その結果写真のようになってしまい、残念ながら意図したようにはなりませんでした。

リモート機能

スピードライトにはリモート機能をもった機種があります。Nikonであれば前述のSB-910、もちろんSB-700にもついている機能です。

リモートとは、スピードライト単体を離れた場所に設置し、マスターストロボ(なぜかマスターライトとはあまり言わないようで…)の光に同調させて発光させる方法です。

以前はシンクロ用のコントローラーが必要だったようですが、現在では内蔵フラッシュなどを利用すればスピードライトだけで実現できます。

SB-700であれば側面に受光部があり、ここで光を感知することで発光を行います。つまり光が感知できる範囲であれば、複数のスピードライトを設置して多灯ライティングが可能となります。

リモートによって何が変わるかというと、単純に光の方向が自由に設定できるようになります。カメラ上部に付けるだけだと順光ですが、逆光や下からの光もお手の物。被写体ではなく背景に光を当てることもできます。

ライティングでは光の当て方が重要になりますから、小型でどこにでも置きやすいスピードライトの使いどころは多いでしょう。

より詳しくスピードライトの使い方を知る

ここまで書いておいてなんなのですが、実はNikonさんのサイトにはスピードライトの特設ページがあります。そちらを見ていただいた方が断然分かりよいかと…。

以下のリンクからご覧下さいませ。

さすがメーカーサイト。Googleのヘルプでもありませんが、必要なことは公式サイトに収まっていますね。

実際、ブツ撮りに使えるのか?

いろいろ書きましたが、実際のところ商品撮影に使えるのかどうか?を少々。

未熟な現時点でですが、単体での使用は難しいです。バウンスさせる空間作りを行えば可能なようですが、レフ板とSB-700というお手軽な組合せではいかんともし難く。

一番の問題は光の堅さでしょうか。

堅い光

バウンスさせても光が堅く、どうもいい具合にできませんでした。前述しましたが、ロケでは天井の色の問題もありますし、天井との距離の問題もあります。

付属のバウンスアダプター(発光部にかぶせる白い半透明にカバー)を使っても、やはり堅い印象です。

カメラ内蔵のフラッシュをマスターストロボとし、SB-700をリモートで使う場合でもマスターの順光が邪魔になり、思うようにはいきません。内蔵フラッシュを用のディフューザーをかって付ければ見え方もかわるとは思いますが、どの程度のものなのか。

リモートを使った多灯ライティング

現在の私の機材には既にモノブロックが一台あるため、一番使いやすいのはサブ照明としてリモートでSB-700を使う方法かなと考えています。

もう一台モノブロックを購入するのは難しいですし、そもそも持ち運びが大変です。小型で軽量、しかも電源が内蔵されているSB-700であれば簡単に持ち運びができてサブ照明にうってつけ。

直接被写体に向けると光が強すぎるのでバウンスが基本になりそうですが、場合によってはハイライトを入れたり演出で使用できそうです。もちろん天井バウンス自体が有効な補助光ですから、それだけでも充分意味はありますが。

2灯体制にできれば絵作りの幅が広がりそうです。

結び

今回は使い慣れない機材の説明となり、内容がブレブレな感じになってしまいました。

雑誌記者がカフェやレストランに取材に行く際にはスピードライトのみで撮影される場合もありますし、使い方さえ理解できれば相当に便利な機材のはずです。

道具があればなんとかなるとは思っていませんが、ただ使うだけではあまり役に立ちそうにありません。しっかりと使いどころを考えないと、1灯の方が良いなどという結果になりかねませんし。

しかし、純正カメラに純正レンズ、そして純正スピードライトだと全て自動で最適な設定になってくれますので、その点は便利の一言。設定を弄る必要すらありませんから非常に手軽です。

なお、この記事ではスピードライトのことをほとんどご説明できてはいません。特に本体で操作できる設定に関してはほんの触り程度。バウンスアダプターの他にカラーフィルターやソフトケースも付属品としてありますし、それらを使えば当然撮影の幅もひろがります。

とはいえ、記事は既にこの長さ。書けたとしても、書けません。

テスト撮影

SB700を使用した2灯ライティングのテスト撮影を行いましたので、興味のある方はご覧ください。

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