ここまで撮影機材や撮影方法を紹介してきましたが。これらで撮影した写真を掲載していなかったため、実際にどう撮れるのかが分かり難かったかと思います。
そこで、新たにスピードライトのSB-700を購入したこともあり、練習がてら試し撮りした写真を公開しようと思います。
微調整をしながら撮影したため結構な枚数になり、いくつかの記事に分けて掲載します。機材の設定なども書いていますので、何らかの参考になればよいのですが。
前提
この記事の写真で使用した機材は以下の通りです。
- カメラ:Nikon D5000
- レンズ:AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED[別窓]
- 照明:TWINKLE 02 Ⅲ(200Ws)-アンブレラ使用[別窓]
- ライトディスク(32inch)[別窓]
- レフ板
- 銀一 シルクグレーカード
これらは以前の記事をご覧いただければお分かりいただけると思います。
「銀一 シルクグレーカード」に関しまして今後記事にできればと思いますが、簡単に説明すると撮影時にカメラのホワイトバランスを調整するための道具です。このカードを撮影時の環境で撮影することで「白を白く」撮ることができます。
もっとも、使い方が悪いのかどうも効果が不安定で、個人的には補助程度の感じですが。
モノブロックの1灯ライティング
この記事ではモノブロックの1灯ライティングを行います。SB700購入まではこの状態が私の撮影方法でした。ちなみに、設置場所は被写体の左奥でして、光が半逆光になるように設置しています。
ロケ先では外光や店内照明がある程度影響しますし、利用することもありました。ですが、基本はモノブロック1灯の灯りをメインとした
ライティングです。
1灯では複雑なライティングはできず、被写体にあたる光の微妙な調整ができません。暗い所はレフ板で起すぐらいかできませんから。反面、1灯だけしかライトがないのでコントロールがしやすく、意図が明確であれば短時間で思い通りの撮影が可能です。
テスト撮影写真
テスト撮影で撮った被写体は、果物と木のプレート。
それぞれの質感の違いを出しつつ、被写体の色を自然に見えるように撮影しました。なお、RAWで露出のみを調整してどの写真でも明るさが近くなるようにしています。
Photo1(照明のみ)
モノブロックの光量を1/4にして、レフ板もディフューザーもなしで撮影しました。
影が濃く劇的な見映えかと思います。全体に光を回していないためともすれば暗い写真になりますが、被写体以外が明るい白のためそれほど暗い印象はありません。
ディフューザーを使っていないためハイライトがきつく、果物の張りや艶は出しやすいとかもしれません。
商品の写真としては少々問題で、果物は秋っぽいのに照明の具合は夏のようです。
Photo2(レフ板使用)
レフ板を被写体の右に設置した以外は上の写真と全く同じです。
被写体の右から光があたるようになり、影は薄れました。レフ板なしだとブドウは一つの固まりという印象でしたが、右から光があたることにより一粒一粒が見やすくなったはずです。
今回はブドウの表面を綺麗にしていませんが、水滴などを付けた状態を演出すれば一粒一粒が輝いて見えたことでしょう。
やはり秋にしてはハイライトが強いため、この被写体にはあまり向かないかもしれません。
Photo3(ディフューザー使用)
レフ板を取り除き、ライトディスクをディフューザーとして使いました。
光が柔らかくなりハイライトが弱くなっています。木のトレーに落ちる影も柔らかさがあり、色自体も落ち着いた印象です。
被写体が秋の果物であることを考えると、方向性は合致していると思います。
Photo4(ディフューザー使用)
Photo3と同様にレフ板なしのディフューザーのみですが、モノブロックの光量を1/4からFull(最大)にしています。
照明自体の灯りが増すとディフューザーを通した光も強くなり、被写体をより明るくします。Photo3の写真とは微妙な差に見えますが、被写体の明るい面が増えており、全体的な明るさが増しています。
被写体の影の部分にまでより多くの光が回り込んでいますから、形状を明確に見せやすくなりました。反面、ディフューザーの白が映り込んで被写体の色がやや白っぽくなった印象もあります。
Photo5(ディフューザー・レフ板使用)
Photo4にレフ板を追加しました。
今まで一番全体が明るく、柔らかい光の写真になったかと思います。フルーツを売りにするケーキ屋さんが「清潔感のある明るい果物の写真を」となりましたら、基本はこれでよいかもしれません。
柿はともかくブドウはもっと瑞々しさが必要ですが、光沢をさすには水や蜜で艶をだす必要があり、照明ではこの辺りが限度です。
白く粉を吹いている印象も気になりますし、その辺りも被写体に手を加えて整えるべきでしょう。ただ、やり過ぎると逆効果になり偽者や安物の印象を与えてしまいます。
Photo6(ディフューザーをライトに近づけて・レフ板使用)
Photo5と機材はまったく同じで、ディフューザーをライトに近づけて撮影しました。
ディフューザーの位置が変わるとディフューズの具合が変わり、被写体の見え方も変わります。このようにライトよりにするかどうかで、ディフューザーで光をどの程度回し、ハイライトをどの程度入れるのかを距離で調整できます。
ライトよりにすると拡散が弱くなり、ハイライトが強めに出ます。拡散しつつもハイライトを出したいとなりましたら、ライトにディフューザーを近づけるとよいです。
Photo7(ディフューザーをライトに近づけて・レフ板使用)
Photo5と機材はまったく同じで、こちらはディフューザーを被写体に近づけて撮影しました。
ご覧の通り全体が明るくなり、ハイライトはかなり弱まりました。
清潔感は増したかもしれませんが、全体的に白っぽくなり被写体自体の色がよわくなってしまいました。
印象としては「被写体が輝いて眩しい」と見えそうではありますが、まるで白い箱に綺麗にディスプレイされたプラスチックサンプルのように見えなくもありません。
艶が不要で柔らかい素材感を持つ被写体であれば、この照明の方がよいかもしれません。
1灯ライティングで半逆光
今回に限らないのですが、撮影時には大抵半逆光になるようにライトをセットします。
これは右手前に影が出るようにして、被写体に立体感を出すためです。順光(カメラと同じ方向からの光)では被写体の奥に影ができますのでカメラからは見えず、のっぺりした写真にとなります。
右の写真はカメラの上にスピードライトSB700をつけて撮影しましたが、順光だとこんな感じです。
こうなると素人っぽく見えやすく、あまり使いどころがありません。イメージカットや明確な意図がある場合は別ですが、基本的には半逆光がよいでしょう。
多灯ライティングでも同様で、メインライトは半逆光にセットした方が失敗しにくくなるはずです。
光をあてるのではなく影を作る、という視点がなければ照明で立体感はだせませんので、立体的な写真が撮れないという方は影を意識してみてください。
影もいろいろ
今回レフ板やディフューザーをつかって影に光を入れていますが、ご覧のように影の様子はいろいろと変化しています。
影は黒いものではありません。他に比べて暗い部分であり、そこに色や形がなけらば俗にいう「黒つぶれ」となんら替わりがありません。こういう写真は大抵失敗になりますから、影を出すだけではなくてしっかり作る必要があります。
このあたりは絵やイラストでも同様で、影をただ単に真っ黒にするようではもったいないです。ややグレーにしつつ他の色味をほんのりにおわせることで、より多彩で自然で面白い表現ができるでしょう。
結び
私的な撮影方法ですが、こんな感じで撮影しています。
今回は露出のみを調整しており、その他の補正は行っていません。通常は露出以外にも彩度やコントラストを上げたり、ホワイトバランスを調整したり、場合によってはゴミを消し部分的な修正を行います。
手を加えずに納品することはあまりありませんが、このあたりは腕の問題も多分にあると思います…。
次の記事はモノブロックとスピードライトの2つを使った2灯ライティング。今回のテスト撮影の目的がこの2灯ライティングなので、実験段階のためあまり参考にはならないかもしれません。
フードカメラマンとフードスタイリストのスゴさ
こんな写真を掲載していてなんですが、質は高くないと思います。
全くの素人が撮るよりはよいと思いますが、専門家であるフードカメラマンの方と比べるともう…。それらの方々が撮影した写真を見ると泣きたくなります。
被写体への理解は当然として。クライントの意向を表現しつつ最大限に魅力的な写真を撮るのですから、撮影毎にセットも撮影方法も異なるようですし。
そして、カメラマンと共に重要な存在がフードスタイリストさんです。
以前テレビで飯島奈美さんという方を見たことがありますが、料理の見せ方など非常にすばらしかったです。私は「深夜食堂」で知りましたが、「カモメ食堂」や「めがね」なども手がけておられるようです。興味のある方はお調べくださいませ。
これらのフード専門の方々のお仕事を見るにつけ、とてもではありませんが「プロと同様の写真」が撮れるとは言えません。どう頑張っても「素人よりはマシな程度」が関の山です。
が、悲観していても前には進めませんし、ご依頼をくださる方に申し訳が立ちません。専門家から盗める所は盗みつつ、撮影スキルも上げねばと思う所存です。
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